【焦点】SEETEL Group:JC-STAR取得を軸に日本市場へ本格参入、日台連携で系統用蓄電池とVPPの将来像を議論

台湾の蓄電池関連企業SEETEL Group、エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局、RAULは7月27日、東京都千代田区で日本市場向け蓄電池ソリューションに関するセミナーを開催した。蓄電池事業者、電力会社、アグリゲーター、EPC、商社、金融機関など、200名近い業界関係者が参加した。
セミナーでは、日本の系統用蓄電池を巡る制度設計、2030年代に向けた電力需給構造の変化、サイバーセキュリティ認証、台湾におけるVPP(仮想発電所)の運用事例が取り上げられた。SEETEL Groupによる日本市場向けの製品戦略に加え、日本と台湾の有識者が分散型エネルギーの将来像を議論した。
■2032年を見据え調整力需要を展望
基調講演では、AnPrenergyの村谷敬社長が、日本の系統用蓄電池制度と2030年以降の事業環境を解説。
日本の電力市場は、東日本大震災後の再生可能エネルギー導入拡大、電力小売全面自由化、脱炭素、地政学リスクの高まりを経て、求められる価値が変化してきた。太陽光や風力を中心とする再生可能エネルギーが増える中、需給バランスや周波数を維持する調整力の重要性が高まっているという。
この中で系統用蓄電池事業は、卸電力取引所、需給調整市場、容量市場を組み合わせて収益を確保する構造となる。一方、需給調整市場の上限価格見直し、保安規定の厳格化、系統接続制約、騒音や防災を巡る地域協議など、事業性に影響する要素も増えている。

村谷社長は、2030年から2032年にかけて市場構造が大きく変化する可能性を示唆。固定価格買い取り制度の対象電源が順次買い取り期間を終え、発電事業者が発電予測やインバランス責任を負う場面が増える。データセンターや半導体工場の電力需要増加も見込まれる。
再エネ電源と大規模需要を効率的に結びつけるには、電力と情報通信を一体で運用する「ワット・ビット連携」が必要になる。足元の市場価格だけでなく、中長期的な制度変更と調整力需要を踏まえた運用能力が、事業の継続性を左右するとの見方を示した。
■自社開発のBMS・EMSを軸に展開
企業発表では、SEETEL NEW ENERGY 技術センターRay Wen 副社長、AUROSI Precision Jeff Chang 副社長から同社の製造、制御技術に加え日本向けの製品戦略が語られた。
SEETEL NEW ENERGYのDarren Chen CEOはグループの蓄電池モジュール累計出荷量は1.9GWhを超え、運用・保守契約容量が625MWhに達するなど台湾市場でトップクラスの実績があることを説明。蓄電システムの設計・調達・施工、自社開発のエネルギー管理システム(EMS)、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、運用・保守までを一貫して提供する垂直統合体制を強みとして挙げた。

同社は2025年に日本法人のENSO NEW ENERGY(和熙新能源)を設立。2026年4月には、セキュリティ要件に関する適合性評価制度「JC-STAR」のレベル1を、BMSと蓄電池モジュール、EMSの両領域で取得した。日本市場では、制度や設置条件に適合した製品を投入し、EPC、発電事業者、アグリゲーター、投資家などとの協業を進める方針が示された。
日本国内向けの製品についてはENSO NEW ENERGY(和熙新能源)の松島可奈恵本部長が、低圧から高圧・特別高圧の大規模蓄電所までを対象とする製品群を紹介。製品認証に加え、消防法や設置基準、保守点検、将来のリサイクルや廃棄までを含む対応状況を説明。日本企業との連携を通じて、開発、施工、運用を含む供給体制を整えていくとした。

特別講演では、台湾国立中央大学の胡誌麟教授が、台湾におけるVPPとマイクログリッドの研究状況を紹介した。同大学のキャンパスでは、太陽光発電、蓄電池、水素燃料電池、可変負荷を備えた複数のマイクログリッドを構築し実証研究が行われている。
胡教授は、単一の建物や工場で完結するマイクログリッドから、複数のマイクログリッドを相互接続する構造への移行を説明。複数地域が電力を融通することで、系統障害や災害時にも重要負荷への供給を維持しやすくなるとの見方を示した。
VPPの展開については、単一需要家の設備最適化、複数需要家のアグリゲーション、デマンドレスポンス、補助サービス市場への参加、複数マイクログリッドの統合運用など複数段階のモデルを詳解した。
■島国型系統の日台に共通課題
後半のパネルディスカッションでは、早稲田大学研究院の石井英雄教授、東京電力ホールディングスの岡本浩上席フェロー、胡教授が再登壇し、松島本部長が進行を担った。
日本と台湾は、他国との広域連系線が限られる島国型の電力系統という共通条件を持つ。再生可能エネルギーの増加に対し、需給変動を域内で吸収し、周波数を維持する必要がある。登壇者は、系統用蓄電池、VPP、デジタル制御を組み合わせた運用の重要性について認識を共有した。

データセンターなどの電力需要が特定地域に集中する中、送配電網の増強だけで対応することは難しいという。電力設備とデータ処理拠点の立地を一体で検討し、デジタル技術を用いて需給を制御する必要性も議論された。
今回のセミナーでは、日本の系統用蓄電池市場が、導入容量を重視する段階から、安全性、サイバーセキュリティ、自律制御、保守体制を含めた総合的な事業能力を問う段階へ移りつつあることが示された。
台湾で蓄積された製造、運用、VPPの実績と、日本の制度や市場環境をどのように接続するかが、SEETEL Groupの日本展開における焦点となる。講演後には懇親会も開かれ、参加者が蓄電所開発、製品調達、アグリゲーション、運用・保守などについて情報交換が行われた。

〔参照〕
▷台湾企業初、JC-STAR取得。日本の蓄電池市場へ −SEETEL Groupによる日本市場向け蓄電池ソリューション−
▷SEETEL Group