特集Original Content

【ゼミ】ヒートポンプ・蓄熱センター:再エネ時代の需要調整力を議論、蓄熱と価格連動制御に期待

2026.08.03

X line


ヒートポンプ・蓄熱センターは7月23日、東京都墨田区で「第23回ヒートポンプ・蓄熱シンポジウム」を開催した。テーマは「環境に優しい運転管理」。再生可能エネルギーの大量導入を支える需要側の役割や、ヒートポンプ・蓄熱システムを活用した電力消費の調整について、有識者や電力事業者が議論した。

■省エネと電化に蓄熱を組み合わせる需要側戦略

特別講演では、早稲田大学の田辺新一教授が「2050年カーボンニュートラルに向けた需要側戦略」をテーマに登壇した。日本のエネルギー自給率は16.4%にとどまり、海外資源への依存度が高い。田辺教授は、需要削減、電源の脱炭素化、電化、水素や合成燃料の活用、排出回収技術を組み合わせる必要性を示した。

建築・住宅分野は国内排出量の約4割に関係する。空調や給湯を高効率なヒートポンプへ転換し、断熱性能を高めることが重要になる。AI普及に伴うデータセンターの増加による電力需要の拡大にも触れ、冷却効率の向上や省エネ技術の導入を求めた。

講演では、家庭用ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の運転時間を夜間から昼間へ移す効果も紹介された。太陽光発電の余剰電力を熱として蓄えることで、自家消費率と運転効率を同時に高められる。

■自動制御と料金制度が蓄熱活用の鍵に

パネルディスカッションでは「ディマンドフレキシビリティとしての蓄熱の役割」を議論した。東京大学の大岡龍三教授が進行を務め、東京大学の岩船由美子教授、Looopの渡邊裕美子CX推進部部長、東京電力エナジーパートナーの小林淳氏が登壇した。

全国のエコキュートなどの消費電力は数十ギガワット規模に達する。沸き上げ時間を深夜から昼間へ移すことで、出力制御される再エネを吸収できる可能性がある。建物の断熱や躯体蓄熱と、給湯機や蓄電池の制御を組み合わせる重要性が示された。

卸電力市場に連動する料金とエコキュートの遠隔制御を組み合わせた実証も紹介された。価格の安い時間帯へ自動で運転を移した結果、1世帯当たり月平均数百円の電気料金削減効果を確認。利用者に操作を求めない完全自動型の制御が普及の鍵となる。

業務用蓄熱設備を夜間電力利用だけでなく、太陽光PPA、デマンドレスポンス、BCP、二酸化炭素削減に活用する「マルチユース」が提唱された。需要や発電量の予測に応じて運転を自動制御することで、最大需要の削減や調整力の確保につながる。

一方、自動制御の普及には、投資回収の不透明さや管理者の負担、価格変動への抵抗感が課題となる。時間帯別託送料金、時刻別の二酸化炭素排出係数、共通APIや「DR Ready」仕様の整備も必要になる。

再エネの大量導入時代には、発電設備を増やすだけでなく、電気を使う時間を発電量に合わせる仕組みが欠かせない。ヒートポンプ・蓄熱システムは、省エネ設備から電力需給を支える調整インフラへと役割を広げている。

〔参照〕
第23回 ヒートポンプ・蓄熱シンポジウムについて