【学会】日本太陽エネルギー学会:太陽光パネル「大量廃棄時代」に備え、リサイクルの現状と課題を議論―水平循環から制度設計まで34講演

日本太陽エネルギー学会太陽光発電部会は9月3~4日、早稲田大学西早稲田キャンパスとオンラインの併用で、第43回セミナー「太陽光発電のリサイクルに関するセミナー」を開催した。太陽光パネルの解体・分離技術から、ガラス、シリコン、アルミニウムなどの再資源化、リユース、排出量予測、自治体や業界団体による制度対応まで、2日間で34講演を組んだ。使用済み太陽光パネルの本格排出を見据え、技術開発を個別の「点」にとどめず、回収から再資源化、再利用までをつなぐ資源循環システムの構築を議論した。
背景にあるのが、2026年6月5日に公布された「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」。公布から1年半以内の施行を控え、太陽光発電設備の大量導入を支えてきた市場が、設置後の資源循環まで含めた新たな段階に入る。学会では、リサイクルを円滑かつ効果的、効率的に進めるための課題や方向性を共有する場として今回のセミナーを位置付けた。
■焦点は「ガラスをどう循環させるか」、前処理技術から水平リサイクルまで
初日は、太陽光パネルの重量の大部分を占めるガラスの再資源化が中心テーマとなった。
早稲田大学の所千晴氏がPVパネルリサイクルにおける前処理技術の現状と課題を示したほか、エヌ・ピー・シーはホットナイフとEVAスクレーパーを用いたガラス分離、トクヤマと新菱は熱分解を利用した処理技術を紹介した。環境保全サービスは「ガラスわけーるⅢ型」を活用したガラス回収と全国展開、浜田はウォータージェットを使ったガラスの水平リサイクルについて説明した。
回収したガラスを単に路盤材などへ利用するのではなく、再びガラス製品として利用する「水平リサイクル」も大きな焦点となった。
AGCは太陽光パネル由来ガラスを板ガラスへ戻す取り組み、セントラル硝子プロダクツは板ガラスリサイクルへの対応を報告。日東紡績は廃棄パネルのカバーガラスを強化プラスチック向けリサイクルグラスファイバーへ利用する技術を取り上げた。
用途開拓は工業材料に限らない。石塚硝子と北洋硝子は伝統工芸「津軽びいどろ」への活用可能性を紹介した。地域産業や工芸品と結び付けることで、使用済み太陽光パネルに新たな価値を付与するアップサイクルの方向性も提示された。
一方、ガラスを再利用するには品質管理も欠かせない。太陽光パネルは製造年代によって含有物質が異なる可能性があり、イー・アンド・イー ソリューションズが年代別の含有物質を解説。AGCや産業技術総合研究所はアンチモンの検査・除去技術を取り上げた。
初日の最後には、宮崎大学の河本桂一氏をモデレーターにガラスリサイクルをテーマとするパネルディスカッションを開催。素材メーカー、リサイクル事業者、研究機関などが、回収ガラスの品質や用途、水平リサイクルを成立させる条件について議論した。
■シリコンや非鉄金属にも資源価値、「捨てるパネル」から「都市鉱山」へ
2日目は対象をガラスからパネル全体へ広げ、非鉄金属やアルミニウム、シリコンなどの資源循環を取り上げた。
DOWAエコシステムは太陽光パネルに含まれる非鉄金属、大同興業はアルミフレームのアルミメーカーへのリサイクルについて報告。トクヤマは廃PVセルからシリコンを回収する技術を紹介した。
シリコンについては、単純な再資源化だけでなく高付加価値化を狙う研究も進む。名古屋大学は産業廃棄物由来シリコンを熱電材料へ転換するアップサイクル、産業技術総合研究所はシリコンを利用した二酸化炭素(CO2)の資源化について説明した。
製品設計そのものを循環型に変える動きもテーマとなった。北陸先端科学技術大学院大学は解体しやすい結晶シリコン太陽電池モジュールの開発を紹介。廃棄段階で処理方法を検討するだけでなく、製造段階から解体性や再資源化性を組み込む「Design for Recycling」の重要性が一段と高まりそうだ。
太陽電池関連部材の材料構成も時代とともに変化している。大日本印刷は材料アーキテクチャーの変遷と次世代戦略を解説し、長期信頼性とリサイクルを両立させる製品設計の方向性を示した。
■法制化で問われる「回収の仕組み」、技術の点を資源循環の線へ
リサイクル技術が確立しても、使用済みパネルを適切な処理施設まで運べなければ循環は成立しない。このため後半では、リユース・リサイクルのプラットフォームや自治体施策、海外制度、LCA(ライフサイクルアセスメント)、将来排出量など社会システム面にも議論を広げた。
リクシアは使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクルプラットフォーム、福岡県リサイクル総合研究事業化センターは県内における資源循環の取り組みを紹介。伊藤忠商事はフランスのパネルリサイクル制度とROSIの高付加価値リサイクル技術を取り上げ、海外制度から日本市場への示唆を探った。
みずほ総合研究所は太陽光発電リサイクルに関するLCAのケーススタディ、野村総合研究所は太陽電池モジュールの将来排出量予測について報告。今後どの地域で、いつ、どの程度の使用済みパネルが発生するのかを把握し、処理設備や物流網への投資につなげる必要性を示した。
東京都環境局も都内の太陽光パネルリサイクルの現状と課題を報告。再生可能エネルギー長期安定電源推進協会、太陽光パネルリユース・リサイクル協会(SP2R)、太陽光発電協会も登壇し、実効性のある制度や業界横断型の資源循環について意見を交わした。
SP2Rが掲げたのは、要素技術の「点」を共創によってPV資源循環の「線」へ変える考え方。今回のセミナー全体を象徴するテーマともいえる。
太陽光発電市場ではこれまで、発電量や発電コスト、長期安定稼働など「導入後いかに長く使うか」が主要テーマとなってきた。今後は、寿命を迎えた設備をどのように回収し、どの素材をどの品質で再利用し、再び産業へ戻すのかまで含めた設計が不可欠になる。
太陽光パネルは廃棄物である一方、ガラス、アルミニウム、銅、銀、シリコンなどを含む資源でもある。大量廃棄を環境問題として処理するだけでなく、新たな資源供給源として循環させられるか。制度施行を控え、日本の太陽光発電産業は「設置する産業」から「循環させる産業」への転換点を迎えている。