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【討論】環境省:太陽光発電の地域共生と『Dual Use』を軸に、環境アセスの在り方を議論

2026.09.07

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環境省は9月3日、東邦大学習志野キャンパスとオンラインのハイブリッド形式で、シンポジウム「地域と共生した太陽光発電の促進に向けた環境影響評価の在り方について」を開催した。国、地方公共団体、太陽光発電事業者の立場から、環境影響評価(環境アセスメント)の制度見直しと今後の太陽光発電の方向性を議論した。

背景にあるのは、2025年12月に政府が決定した「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」。政府は不適切事案への法的規制強化、地域の取り組みとの連携、地域共生型への支援重点化を柱に、環境影響評価制度の対象拡大や審査の実効性強化を進める。シンポジウムでは環境省、経済産業省、三重県、太陽光発電協会(JPEA)の順に講演し、その後パネルディスカッションを実施した。

■法アセス対象を半分に2万kW以上へ引き下げ

冒頭、環境省大臣官房環境影響評価課長の岡野隆宏氏が、環境影響評価法の対象となる太陽光発電事業の規模要件見直しを説明した。

太陽光発電は2020年4月から環境影響評価法の対象となり、第1種事業を4万kW以上、第2種事業を3万kW以上4万kW未満として運用してきた。一方、森林や傾斜地、湿地など幅広い場所に設置できること、森林開発や切土・盛土など広範な土地改変を伴うこと、反射光や景観への影響が発生する可能性があることなど、太陽光発電特有の環境影響が顕在化してきた。

加えて、設備の設置が比較的容易で新規参入もしやすく、施工技術や環境配慮、地域との対話に対する事業者間の意識にもばらつきが生じやすいとの課題が浮上した。

こうした状況を踏まえ、政府は規模要件を大幅に引き下げる。2027年4月1日から第1種事業を「4万kW以上」から「2万kW以上」、第2種事業を「3万kW以上」から「1万5000kW以上」に変更する。環境紛争が報告された現行法対象未満の太陽光発電を分析したところ、1万2000~3万kW未満では2万kW以上の事業が大宗を占めたことなども判断材料となった。

岡野氏は、法による規制強化だけでなく、地方公共団体の条例との連携も重要になるとの考えを示した。国の法アセス、自治体の条例アセス、それより小規模な案件への自主的な環境配慮を組み合わせ、規模だけでは拾い切れない地域特性への対応を進める。

■森林・傾斜地をスクリーニングに追加、「評価書を書いて終わり」にしない

続いて経済産業省大臣官房産業保安・安全グループ電力安全課の遠藤充氏が、「太陽光発電事業のスクリーニング基準の見直し等について」を講演した。

第2種事業では、すべての案件に一律で法アセスを義務付けるのではなく、事業地周辺の自然環境や法令指定区域などを確認し、本格的な環境影響評価が必要かどうかを個別に判断する「スクリーニング」を実施している。

経産省は今回、この判定基準そのものも見直す。特に問題が多く発生してきた森林開発や傾斜地への設置を踏まえ、「森林」と「傾斜地」の観点を新たに追加する方向で検討を進める。規模要件の引き下げと同じ2027年4月の施行を予定する。

焦点となったのが、環境アセスメントの「実効性」。環境影響評価は配慮書、方法書、準備書、評価書と手続きを重ねても、その内容が実際の工事や運転に反映されなければ意味が薄れる。

経産省は、①環境影響評価段階、②工事計画の届け出段階、③設備運用段階――の3段階で実効性を高める。工事計画の届け出時には、評価書で示した環境保全措置が設備配置やパネルの仕様、高さ、設置角度などにどう反映されているかを事業者に説明させ、評価書との整合性を確認する運用を強化した。

安全規制も強化する。太陽光発電設備では出力の大小を問わず、モジュールの飛散や破損などの事故が発生している。今後は10kW以上の設備について登録機関による構造安全性の適合性確認を導入するほか、事故原因の究明に際して製造事業者、輸入販売事業者、工事事業者などに協力を求める制度を整備する。必要な協力が得られない場合には、経済産業大臣による勧告や公表も可能とする。

■「造成なし」もアセス対象に

地方公共団体の取り組みとして、三重県環境生活部環境共生局地球温暖化対策課長の池田克弥氏が県独自の制度改正を紹介した。

三重県は年間日照時間が全国8位と良好な日照条件を持ち、2024年度末の太陽光発電導入量は290万8000kWで全国7位。県内には約11万件の太陽光発電施設があり、1MW以上のメガソーラーも2025年7月時点で391件に達する。

その一方、2022~24年度の3年間に県へ寄せられた太陽光発電関連の相談などは277件に上った。雑草繁茂71件、標識不備30件、柵不備23件など維持管理に関する内容が約45%を占めたほか、住民説明会、排水・土砂、設置への不安、反射光など幅広い問題が寄せられた。森林を伐採するメガソーラーへの懸念も強まっている。

県はこうした声を受け、環境影響評価条例の適用対象を拡大する。現在は最小10haとしている面積要件を原則5haへ半減。森林区域については1ha以上まで対象を広げる。

特徴的なのは、土地造成の有無を問わなくすること。県内で事業区域10ha以上の太陽光発電施設は41件あるものの、法・条例に基づくアセス実施は11件にとどまる。ゴルフ場跡地など、既に造成された土地へ設置するケースが少なくないため。ゴルフ場跡地を利用した案件は件数ベースで32%、面積ベースでは55%を占める。造成を伴わなくても反射光や景観など供用後の影響は生じ得るとして、新制度ではこうした案件も対象に加える。

2026年10月頃に改正施行規則を公布し、2027年4月1日の施行を予定する。環境影響評価技術指針も改定し、新たに「反射光」を評価項目へ加える方向だ。

池田氏は同時に、環境影響評価制度だけですべての問題を解決することは難しいとの認識も示した。5ha未満の森林以外の自然地や湿地、ため池など生物多様性上重要な環境については、自然環境保全条例をはじめ他制度との連携が今後の課題になる。

■山林開発から「Dual Use」へ

最後の話題提供では、太陽光発電協会(JPEA)事務局長の増川武昭氏が、国内外の市場動向と業界が目指す地域共生の姿を示した。

世界の太陽光発電市場は急拡大を続ける。2025年の新規導入量は698GWに達し、2014年から11年間で17倍超に増えた。一方、日本の2025年度のFIT・FIP対象導入量は2GWまで減少。2014年度のピークから約5分の1の水準となった。

それでも国の第7次エネルギー基本計画では、2040年度の太陽光発電比率を電源構成の23~29%と見込む。現在の導入量約80GWから約3倍へ増やす必要があり、JPEAも2040年度227GW、2050年度400GWを独自の導入見通しとして掲げる。講演資料では、世界的な太陽光と蓄電池のコスト低下も示し、太陽光と蓄電池を組み合わせた電源の競争力が高まりつつある状況を説明した。

では、今後どこへ設置するのか。
増川氏が示したキーワードが「Dual Use(デュアルユース)」だった。

山林を切り開き太陽光専用地をつくる開発から、建物の屋根や壁面、工場・倉庫、営農型、駐車場、空港など、既に別の用途で利用されている空間を太陽光発電にも使う方向へ転換する。JPEAの「PV OUTLOOK 2050」でも、今後の導入拡大を建物や開発済み土地などで担い、山林での導入はほとんど増加しない姿を描いた。

FIT・FIP支援についても、単に地上設置型を一律に扱うのではなく、公有地、自治体が指定する促進区域、地域産業の活性化につながる案件、遊休地の有効活用、地域内での電力地産地消、災害時の電源確保など、公益性や地域貢献が認められる事業への重点支援をJPEAは提案する。

法令遵守だけでは地域共生とは呼べないとの考えを強調。地域との信頼関係を築き、自然環境や生物多様性に配慮し、地域経済や農業、防災などに具体的な便益をもたらすことを「当たり前」にする必要があるとの立場を示した。太陽光発電を主役とするのではなく、地域や農業の担い手を主役に据え、その課題解決に太陽光を活用する発想を訴えた。

■「規制強化」と「導入拡大」をどう両立するか 地域共生が次の市場を決める

講演後には、日本環境アセスメント協会会長の島田克也氏も加わり、「地域と共生した太陽光発電の促進に向けた環境影響評価の在り方」をテーマにパネルディスカッションが設定された。

一連の講演から浮かび上がったのは、太陽光発電政策が新たな段階に入りつつあること。国は法アセスの規模要件を半分に引き下げ、森林や傾斜地をスクリーニングに加える。自治体は地域特性に合わせ、小規模な案件まで条例で補完する。

一方で、2040年に向けて太陽光発電そのものは大幅に増やさなければならない。規制するか、導入するかという二者択一ではなく、「どこに、誰が、どのような方法で設置すれば地域から受け入れられるのか」が問われ始めている。

山林を新たに切り開くメガソーラーから、建物、農地、駐車場、公有地などを重ねて活用するDual Useへ。環境アセスメントも、事業を止めるための手続きではなく、立地選定から施工、運転まで環境配慮を事業に組み込み、地域との合意形成を促す仕組みへと役割が広がる。

太陽光発電の導入量を再び伸ばせるかどうか。その前提条件として「地域共生」と「自然環境への配慮」をどこまで事業の標準仕様にできるかが、次の市場形成を左右する局面に入っている。

〔参照〕
シンポジウム「地域と共生した太陽光発電の促進に向けた環境影響評価の在り方について」の開催について