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【独自】サイプレス・スナダヤ:国産材で輸入材に挑む、老舗が描く次代の製材業―大規模量産とCLTで新たな木材需要を開拓

2026.09.28

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柔らかなヒノキの香り漂う。愛媛県西条市にサイプレス・スナダヤが2018年に稼働させた東予インダストリアルパークは在る。遠方に西日本最高峰石鎚山が臨む。工場内部には欧州の最先端設備が並び、大量生産を前提とした製材体制が構築されている。

丸太がラインに投入されると、スキャナーが一本ずつ形状を読み取り、切削、製材、選別へと進む。巨大な設備の間を原木が流れ、ほとんど人手を介さず構造材へ姿を変えていく。

製材事業とは「装置産業」であるという。あらゆる資源のレジリエンスが見直される中、老舗製材メーカーが見据える国産材の姿とは。

■輸入材から国産ヒノキへ、130年超の転換

創業130年超。同社の源流は古く、元禄元年に「砂田屋」という屋号で塩田業と塩田用具の製造を通じて木材を扱ったことにあるという。1892年に砂田屋材木店を開設。北米産米ヒバの輸入・加工を中心としてきたことから「CYPRESS(米ヒバの英語名称)」を社名に採用。

国産材の可能性に着目し2008年から国産ヒノキの製材・集成材生産に本格参入した。2018年には新工場でCLT(直交集成板)の生産も開始。サプライチェーンの強化を背景に2023年、大林組と資本提携している。

主力樹種は国産ヒノキ。原木の約6割を四国から調達し、岡山や九州、静岡などにも仕入れ先を広げる。年商120億円規模。

2025年に就任した5代目の砂田雄太郎社長は「現在、事業の中心は住宅向けの製材・集成材で、売上高のおよそ93%を占める。残る約7%がCLTを中心とする非住宅分野」と説明。「国産ヒノキに限れば、取扱量は国内トップクラス」との認識を示す。

大量の木を安定して集め、大型設備で規格品へ加工する。国産材を「地域資源」だけでなく、工業製品として市場へ送り出す点に同社の特徴がある。まさに「装置産業」である。

東予インダストリアルパーク工場では約2MWの太陽光発電設備を導入し、自家消費型PPAで電力需要の約15%を賄う。製材工程で生じる木屑も燃料として活用している。

■縮む住宅市場、その中で進む国産材シフト

勝ち筋はどこにあるのか。国内の住宅着工戸数は減少傾向にある。成長局面とは言い難い。同時に住宅用木材の多くは北欧を中心とする輸入材の存在感が大きい。

曰く「コロナ禍を背景としたウッドショックも去ることながら住宅に使われる木材は輸入材から国産材への切り替えが進みつつある。長引く円安環境も影響し、輸入価格が上昇したことで、国産材が見直されている。住宅着工は中長期的に減少傾向と予想されているが、近年、国産材のシェアは伸びている」と分析する。

国産回帰。需要に応えるため北海道で次の一手を進める。中部電力との共同出資で設立した釧路ウッドプロダクツは、北海道産トドマツなどを使い、集成材用ラミナや2×4材を生産する計画。2028年4月の商業生産開始をめざす。

「品質、価格、供給量でも輸入材と競争できる状態をつくる」。必要な木材を国内で伐採、加工し、一定量を供給できる能力を維持することは、サプライチェーンの持久力を高める。資源を自国で循環させるという広い意味で、経済安全保障にも通じる。

「ただ、この状況を追い風と捉えるだけでは不十分。国産材のシェア上昇にはいずれ限界が来る。その時、住宅着工の減少がそのまま木材需要の縮小につながる。住宅だけではない需要を開発していく。それがCLTを中心とした非住宅市場である」との展望を語る。

■脱炭素の切り札「CLT」 木造高層ビルの建設相次ぐ

「CLT:Cross Laminated Timber(直交集成板)」とは、ヒノキやスギなどの板を木目が直角に交差するよう交互に積み重ねて接着した大型木製パネルで、分厚い「面」として壁や床を構成する。従来の柱と梁による構造に比べ高い強度を備え、コンクリートや鉄骨に代わる主構造として中高層ビルへの採用が広がっている。

建物の脱炭素化に向け、新世代の木質材料としても注目を集める。木材は成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収する。建物に組み込むことで都市部に炭素を貯蔵する効果が見込め、製造時や解体時の排出量削減にも寄与するとされる。

建築基準法の改正に伴う木造建築の規制緩和、戦後植林された国産材が利用期を迎えたことも普及を後押し。工場加工による施工性の向上や短工期化の利点も大きく、林業活性化と環境負荷低減を両立する次世代建材として存在感を高めている。

その象徴が2025年に開催された大阪・関西万博の大屋根リングだった。リング全体では約6300㎥のCLTが使われ、その7割以上をサイプレス・スナダヤが製造した。

CLTは工場で大版の状態まで加工し、現場へ搬入できる。プレカットによって現場作業を減らし、工期短縮につなげた。構造材をそのまま仕上げとして見せられる点も木材ならではの強みとなった。

大量の材料を短期間で供給する必要があり、しかも大林組、清水建設、竹中工務店の各JVで細かな仕様が異なったが、連続生産できる案件は、同社の大型設備とも相性が良かった。

大屋根リングは巨大な木造建築という話題性だけではない。国産材を大量かつ一定品質で供給する「製造業」としての力量を示した案件でもあった。

ただ、CLTの普及にはコストや耐火性能などの課題も残る。砂田社長は、木造だけにこだわるのではなく、鉄骨やRCとの組み合わせ、それぞれの長所を生かす混構造に可能性をみる。

耐火被覆や塗装などの工程を工場側であらかじめ済ませるなど、現場作業を減らす方向も検討する。CLTを単に製造するだけでなく、施工性まで含めて付加価値を高め、非住宅分野での需要拡大につなげる考えだ。

住宅市場が縮小しても、木材そのものの可能性まで縮むわけではない。

輸入材から国産材への転換を図り、北海道で新たな量産拠点を築く。CLTを軸に中高層建築や非住宅市場を開拓する。国産材を一定の品質、価格、数量で供給できる産業基盤づくり。

東予インダストリアルパークでは今日も、巨大なラインを丸太が流れていく。一本の原木を価値ある建材へ変えながら。老舗製材メーカーの挑戦は続く。

〔参照〕
▷サイプレス・スナダヤ

【取材・協力】
株式会社オルテナジー
再生可能エネルギーの利活用を支援する総合エネルギー企業。太陽光発電や蓄電池のEPC(設計・調達・施工)、O&M(運用・保守)、PPA、コンサルティングなどをワンストップで展開する。発電設備のサイバーセキュリティ対策や遠隔監視などにも取り組み、企業の再エネ導入や脱炭素化を幅広く支援。