【独自】 エンフェーズ・エナジー:狭小住宅太陽光普及のトリガーなるか!? 世界大手マイクロインバーターが遂に上陸

Robin Yan GM , Emerging Marketsと永井文策カントリーマネージャー(右)
狭小住宅太陽光普及のトリガーなるか―。
マイクロインバーターを展開する北米大手エンフェーズが遂に本格参入する。伊藤忠商事と戦略的業務提携等で販路を確保。先行して設置義務化が始まる東京都「優れた機能性を有する太陽光発電システム」の上乗せ補助対象に認定されるなど盤石な体制へと歩を進める。その戦略とは?本国より来日したRobin Yan GM , Emerging Marketsと海外メーカーの橋渡し役を長年務め、このほどカントリーマネージャーに就任した永井文策 氏に今後の方向性を訊いてみた。
エンフェーズ・エナジー(Enphase Energy)は、2006年にラグ・ベラー(Raghu Belur)氏とマーティン・フォルナージュ(Martin Fornage)氏により米国カリフォルニア州で設立された。インターネットの拡大やパソコンの普及、スマホの登場からAI時代を見越し『太陽光発電をインテリジェンス化していく』との視座から誕生した技術系スタートアップである。
その後、じわりと浸透し2011年に100万台を出荷。翌年にNASDAQへ上場。今やマイクロインバーターのパイオニア的存在としれ知られ、北米と欧州を中心に世界160カ国以上に約8000万台・約4.7百万世帯に導入されている。2024年の売上高は13.3億ドル(約1,885億円)。近年は太陽光発電と相関するEV充電、蓄電システム、住宅用エネルギーマネジメントシステムなどにも注力する。

(出典:HPより)
このマイクロインバーターは、太陽電池パネルをケーブルでつなぎ一箇所に集電する集中型やマルチストリングス型と異なり、太陽電池パネル1毎ずつにインバータを搭載する方式。直流(DC)から交流(AC)への変換において安全性が高いとされる。この他、パネル毎に制御するため、部分的な影の影響を受けにくい、不具合の早期発見につながる、増設が容易、火災リスクが低いといった特徴がある。
例えば、従来型のインバータでは、1枚でも日陰になると他のパネルも発電効率が落ちる。一方で、マイクロインバーターは、日陰の1枚だけの影響で済み、他のパネルは全て発電するといった具合である。
また、米国では火災発生など緊急時に電源をオフするラピッドシャットダウンが義務付けられている。消防士など初期対応者の感電等を防ぐ。日本ではあまり馴染みはないが「近年、北米の住宅太陽光市場で主流になり、欧州各国、世界的にも拡大基調にある」という。
「米国市場では平均出力6-7kWで10kWを超えるケースもある。住宅自体が広く電気代が高くなることから『太陽光発電を設置すれば電気代を削減できる』という認識が一般的。地域によるがハリケーン多発地域や夏場に高温となる地域などはバックアップや自家消費として蓄電池の導入も加速傾向にある」
「販売ルートとしては各家庭への訪問によるものやインターネット経由、世界に先駆けて義務化したカリフォルニア等では新築時に住宅事業者が設置するケースなど様々だが日本と市場環境は変わらないだろう」と分析した上で「日本国内へは10年前から参入を検討してきた。このほど体制が整いつつあることから本格展開を開始する」と意気込む。
続けて「日本は非常に高い品質とサービスレベルが求められる。当社は、市場で最長となる25年間の製品保証を提供している。一般的な保証期間が10年程度であるのに対し、大きな差別化要因と考えている。24時間365日対応のコールセンターも設置する予定」と説明した。

伊藤忠商事資料より
既に伊藤忠商事とマイクロインバーターの日本市場における販売・マーケティングを目的とした販売代理店契約を締結。この革新的な技術を全国の太陽光発電事業者に展開することをめざす。
伊藤忠商事と東京センチュリーのグループ会社で初期費用ゼロ円モデルを展開するIBeeTや住宅市場に強いハンファジャパンがプレミアム太陽光発電システム「Re.RISE AC(リライズエーシー)」として実装をはじめるなど商流を確保。
今春から設置義務化がスタートし、注目が集まる東京都の「優れた機能性を有する太陽光発電システム」の上乗せ補助対象に認定されるなど盤石な体制へと歩を進める。
「日本においては自立運転機能がニーズとして高いことからオプションとして後付できる商材も用意した。現在、多くの一般家庭では太陽光発電による電気代の節約メリットを十分に受けられていない。従来インバータと異なり、マイクロインバーターは太陽光発電パネル1枚からでも設置が可能となる。狭小屋根が多い国内において最適なソリューションだと考えている。これまで培ったノウハウや技術、地域に根ざした販売戦略で太陽光発電普及に貢献していきたい」と語った。
〔参照〕
▷Enphase Energy
▷Investor Presentation February 2025
▷米国Enphase Energy Inc.との日本市場における戦略的業務提携について
▷日本初上陸!米国製 超小型パワコン付きソーラー発電
▷米国最新型マイクロインバーターを搭載したプレミアム太陽光発電システムを発表
▷【令和6年度】 優れた機能性を有する太陽光発電システムの認定