特集Original Content

【焦点】Univers:世界の再エネ2割・1TWの管理人、国内蓄電領域でも3割超―フィジカルAIで建物・社会インフラに照準

2026.10.03

X line


世界の再生可能エネルギー設備容量の約2割に相当する1070GW超をAIで管理するシンガポール発のテクノロジー企業、Univers(ユニバース)が日本で次の一手に動く。国内では系統用蓄電所向けIoT・制御ソリューションで30%超のシェアを確保。累計導入容量は約1.5GWh、契約済み容量は約2.5GWhまで積み上げた。電力・蓄電池で築いたリアルタイムデータ接続と制御の基盤を、今度は建物や社会インフラへ広げる。

9月29日に東京都内で開いたメディア懇談会では、シンガポール本社の戦略的クライアントサクセス担当のMun Lock Kumバイスプレジデントと、日本法人の百合田和久カントリーマネージャーらが登壇した。人手不足、インフラ老朽化、電力需要の増加、脱炭素という日本が抱える複数の課題に対し、AIを単なる分析やモニタリングから現実世界の設備運用へ踏み込ませる「フィジカルAI」の展開方針を示した。

■4.5億台を接続、世界のエネルギー資産1070GWを管理

Universはシンガポールに本社を置き、AI、産業用IoT、OT(運用技術)を組み合わせて電力網や建物、交通、製造設備などの運用を最適化するテック企業。2017年設立と比較的若い。とはいえ世界で4億5000万台超のセンサーやデバイスを接続し、AIで管理するエネルギー資産は1070GW超。これは世界の再エネ設備容量の約20%に相当する。45カ国、800社超の企業・組織が同社のプラットフォームを利用している。

2025年にはGartnerの産業用IoTプラットフォーム分野のMagic Quadrantで「Leader」に位置付けられた。国連グローバル・コンパクトなどからサステナビリティ分野の評価も受ける。導入先はエネルギーに限らない。マイクロソフト、HSBC、スターバックスなどのグローバル企業のほか、日本ではオリックス、ユーラスエナジー、クラフティア、住友商事などへの支援実績を持つ。

創業の地シンガポールは、その技術を実装する巨大な実証フィールドでもある。電力網、公共住宅、港湾、交通など社会を支えるインフラで技術を展開し、地区レベルのスマートグリッドやVPP、公共住宅向けクラウドBMS、港湾オペレーションなどに領域を広げてきた。設備を「見る」ためのIoTではなく、複数設備の状態を理解し、次の運用につなげる基盤となる。

■日本攻略の突破口は系統用蓄電池

日本ではまず電力市場に照準を定めた。再エネの普及で電力システムは大きく変わりつつある。従来は大型電源から需要地へ一方向に電力を送る構造だったが、太陽光など分散型電源が需要地側に大量に入れば、逆潮流や局所的な系統混雑が発生する。火力発電など回転機電源の比率低下による系統安定性への対応も必要になる。

その結果、電気を必要とする需要がある一方で、場所や時間によって再エネの出力制御が発生する。Universはここに蓄電池とリアルタイム制御を組み合わせた。余剰電力を蓄電池へ取り込み、必要な時間へシフトする。既存系統を有効活用しながら再エネを最大限使う発想となる。

約2年半前から国内向けの蓄電所制御ソリューションを本格開発。製品開発だけでなく、アグリゲーターやPCS・蓄電池メーカーとの接続環境を整え、エコシステムを構築した。現在、国内の系統用蓄電所向けIoT・制御ソリューション市場で30%超のシェアを握ると同社は推計する。

Univers自身がアグリゲーターとして電力市場を取引するわけではない。アグリゲーターが市場で決めた充放電指示を受け、異なるメーカーのPCSや蓄電池を実際に動かす制御レイヤーを担う。機器メーカーに依存せずデータを接続できる点を武器に、投資家、蓄電所オーナー、アグリゲーター、メーカーの間をつなぐ「共通基盤」の位置を押さえた。

百合田氏は前職の大手総合リース会社時代、UniversのIoTを日本第1号顧客として導入した人物でもある。その後Universへ移り、日本事業を率いる。エネルギー業界での経験を背景に、最初の標的を系統用蓄電池へ絞ったことが短期間での市場浸透につながった。

■「監視」の先へ、AIが次の行動を示す

次の焦点とするのは建物と社会インフラ―。

背景にあるのはエネルギー問題だけではない。少子高齢化による人材不足が進む中、従来のように各施設へ十分な管理人員を配置し、熟練者の経験に依存して運用を続けることは難しくなる。多店舗、多拠点を抱える企業ほど、設備管理の標準化と省人化が経営課題として浮上する。

空調、照明、電力、設備稼働、在室状況、太陽光、蓄電池、EV充電設備など、ばらばらに存在するデータを一つのプラットフォームへ接続する。次に、それぞれのデータがエネルギー消費、CO2排出量、設備状態、財務コストなど経営上どのような意味を持つかを構造化する。その上でAIが運用結果から学習し、「今日、何を優先して実行すべきか」まで提示する。

例えば、複数店舗の保守予算が限られている場合、AIが設備状態やリスク、費用対効果を踏まえて優先順位を提示する。人は大量のデータを監視し続けるのではなく、重要な判断や例外対応に集中する。百合田氏はこうした段階まで数年で進めたい考えを示した。

同社が掲げるのは、「何が起きているか」を示すモニタリングから、「次に何をすべきか」を提示する運用への転換となる。シンガポールでは既に建物や交通インフラなどで導入が進み、施設管理ではAIによる空調最適化で労働生産性を高めながらエネルギー消費を削減した事例もあるという。

興味深いのは、Universが建物や社会インフラで投入する商品や市場を現段階で細かく固定していない点にある。日本市場の課題を探り、既存企業だけでは埋めにくい部分を見つけ、自社のIoTやAIを組み込む。必要なら国内企業と組み、足りないピースを提供・協業していく。この手法は系統用蓄電池で市場を開拓した方法と重なる。日本で実績を積んだデータ接続、制御、パートナー連携のモデルを、建物、商業施設、交通、物流などへ広げていく。

世界の再エネ容量の約2割、1TWを超えるエネルギー資産を管理するUniversにとって、日本の蓄電池市場は一つの入口となった。その入口で3割超を押さえた後、次に挑むのは「人が少なくても社会インフラを維持できるか」という、日本が避けて通れない課題。フィジカルAIが電力の制御から建物や都市の運用へどこまで入り込めるのか。日本での第2幕が始まろうとしている。

〔参照〕
▷Univers