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【独自】ダイヤモンドエレクトリックホールディングス:企業再生屋のプロが掲げた『炎のスクラム』――自動車とパワエレの融合から7年。V字回復を超えて年商2000億円をめざす持続可能な慎重論

2026.01.18

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ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 小野 有理 代表取締役社長


企業再生に闘志を燃やす経営者がいる。吸収合併劇から7年。自動車とパワーエレクトロニクスの融合でV字回復を形にしつつ、手綱を緩めない。目標は売上高の大幅拡大だが、拡大一辺倒とは距離を置く。持続可能性を重視した慎重論の先に、次世代を担う組織像を描く。

■スマートエネルギー業界に衝撃が走った合併劇

大阪に拠点を置く老舗2社が融合したのは2019年1月。車載機器で世界市場を相手取ってきたダイヤモンド電機と、太陽光発電や蓄電の電源技術で存在感を築いた田淵電機の統合は、当時のスマートエネルギー業界に衝撃を与えた。

分野は違えど、同郷でモノづくりを磨き上げ、日本経済の発展と産業化を支えてきた“盟友”同士だったからだ。

その再生の旗振り役が、ダイヤモンドエレクトリックホールディングスの小野有理社長。経営コンサルティングの現場で企業再生に携わり、独立後も中小企業の戦略と再生を主戦場としてきた。製造業・サービス業の取締役も務め、組織改革の実務を重ねた。

統合の背景には、再エネ市場の急拡大とその反動がある。固定価格買取制度(FIT)導入以降、国内の太陽光発電市場は拡大した。一方、買取価格の低下や規制強化など政策変更の影響で縮小局面に転じ、田淵電機は事業再生ADRへ追い込まれた。ここに再生の手を差し伸べたのが小野氏だった。

もっとも、ダイヤモンド電機も2016年時点では経営難にあった。米国での独禁法違反により80億円超の資金流出を経験し、人員流出も重なった。事業の見直しと体質改善を進め、2018年3月期には過去最高益へ持ち直した直後の決断だった。

統合後も難局が続く。コロナ禍による半導体不足、原材料高騰。小野氏は金融機関だけでなくサプライチェーンや取引先に足を運び、「お客様要求品質第一」を徹底すると説明し続けたという。

社内では「約束を守る」「やり続ける」「やり遂げる」を合言葉に、現場の規律と実行力を鍛え直した。

統合の前史として、両社の歩みは対照的でありながら日本ものづくり経済における補完関係にあったといえる。

田淵電機は1925年に珪素鋼板の販売およびラジオ用鉄芯の製作会社で創業。トランスやリアクターといった電源技術を基盤に、再生可能エネルギー分野へ展開し、太陽光発電用パワーコンディショナや蓄電システムで国内市場を牽引してきた。

一方、ダイヤモンド電機は1937年に自動車用点火コイルメーカーとして事業を確立。戦後は車載機器と電子制御技術を磨き、海外展開を進めてきた。

車載と電源。異なる領域で培った技術資産が、統合によって一つの事業ポートフォリオへ束ねられた訳だ。

■数字に表れ始めた再生の手応え

合併から6年。V字回復へ。2025年3月期は売上高917億円、営業利益22億円、営業利益率2.5%と黒字基調を維持した。セグメント別では自動車機器が為替の影響や中国需要で増収、材料費率改善で収益が持ち直した。

エネルギーソリューションは区分変更も追い風に増収増益。電子機器は主要顧客の需要減で減収となったが、セールスミックス改善などで利益は横ばいを確保した。有利子負債は前期末比で圧縮し、フリーキャッシュフローも改善した。

ただ、目線は足元の増収増益より先にある。中長期経営計画【炎のスクラム】では、2028年3月期に向けた売上高の「ターゲット2,000億円」と、より確度を重視した「コミットメント1,500億円」を併記した。

収益面は営業利益率6%以上、資本効率はROE20%以上を掲げる。2026年3月期の会社予想は売上高943億円、営業利益20億円、営業利益率2.1%。成長投資の増加を織り込みつつ、段階的に収益性を引き上げる設計となる。

■中計「炎のスクラム」が描く成長曲線

中計の推進軸は「三本槍」。自動車機器では点火コイルの世界シェア首位を前提に、世界最適生産の追求でコスト優位性を作り込む。

加えて同社は2023年5月、アンモニア燃焼に対応する次世代燃料エンジン向け超高エネルギー点火システムの開発を発表している。世界初の試み。
アンモニアをはじめとする次世代燃料は燃焼特性に課題が多く、安定着火には従来を超える点火技術が求められる。

「電気自動車が直ちに全てを代替するとは想定せず、内燃機関の段階的な進化を前提に、燃料自体が脱炭素化される局面で不可欠となる技術」と位置付ける。電動化と内燃機関の共存期間を見据えた現実的な技術選択といえる。

エネルギーソリューションでは住宅用蓄電システムのシェア拡大を掲げ、補助金申請支援やリプレイス販売の本格化で需要を取り込む。

従来機「EIBS7」の認証期限終了に伴い、新型EIBS No.8(恵比寿八(通称:エビハチ)を2026年春に投入する。高電流パネル対応や蓄電容量の拡張、DR対応による系統への逆潮流機能を備え、機器の小型・軽量化も図った。太陽光の余剰電力活用から系統連携までを視野に入れ、分散型エネルギーの中核機器としての位置付けを強める。

電子機器では空調トップメーカー向けのシェア拡大とリアクター・トランスの拡販を進め、産業用パワコンの復活を視野に収益構造改革へ踏み込む。

共通して前提となるのは、顧客との信頼関係に基づく共同販売戦線の構築と、社会インフラとしての製品開発を促す姿勢だ。

「当社に営業という概念はない。『お客様接点創造部』という。全ての人とのつながりの中で、社会に役に立つ情報やアイデアを拾うことで分野横断的に展開していくことをめざしている」

「炎のスクラムで示した通りセグメントとしては3領域ある。大枠としては『自動車と家』だが本質は地球環境に資するものづくり。徹底的に現場視点、相手の立場に立ち、企業や業界を超えた組織文化をつくっていきたい」とアツい想いを語っていた。

その旗印は派手だが、歩みは現場起点という慎重さ。V字回復の先にあるのは、売上だけでなく、規律と実行力を併せ持った組織という持続可能性の構築なのかもしれない。

〔参照〕
2025年3月期 第4四半期決算説明資料
<世界初> アンモニア燃焼技術開発~アンモニアを筆頭にした次世代燃料エンジン用超高エネルギー点火システムの提供を目指して~
住宅向け蓄電ハイブリッドシステム 新型 EIBSリリースに関するご案内