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【独自】日比谷花壇:業界初!『エコ・ファースト企業』環境大臣認定取得、環境配慮・脱炭素化に先陣―老舗が織りなす新潮流、サステナビリティな「お花」は如何が?

2026.07.06

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日比谷花壇 ブランドコミュニケーション室ディレクター 兼 サステナビリティ推進室長 松本庸 氏

花―。それは最も尊い価値をもつ一つの存在かもしれない。歓喜。人生の節目を彩り、哀悼にそっと寄り添う。古来より人類の営みと共にある。暮らしの中で最も身近な自然の一つ。単なる装飾品ではなく、感情や記憶を受け止めてきた。その優和で温かい産業が、今、環境配慮と脱炭素化という新たな課題解決に挑む。

老舗フラワーカンパニーとして知られる日比谷花壇は2026年1月14日、花き産業で初めて環境省『エコ・ファースト企業』に名を連ねた。同制度は地球温暖化対策や廃棄物・リサイクル対策などの先進的な取り組みを掲げ、業界をけん引する独自性や波及効果を認定するもの。花とみどりを扱う産業が自然資本と密接に結びつく中で、業界全体の環境対応を進める契機になりそうだ。

同社は、環境負荷を抑えた商品の開発や店舗運営、資材削減、フラワーロス対策、地域連携、生物多様性保全などに取り組んできた。サステナビリティ分野を推進する松本室長は「今後、花き産業全体でまだ十分に進んでいない脱炭素化を広げていきたい」との意気込みを語る。老舗が織りなす新潮流。その現在地に迫った。

日比谷花壇の源流は1872年、東京・葛飾区堀切で庭園業「芳梅園」を開業したことにさかのぼる。創業当初は庭づくりや植栽管理を中心に手掛けていたが、時代の変化とともに西洋式の婚礼・宴会装花へ事業を広げた。

転機となったのは1950年。戦後復興の流れの中で、東京都からの呼びかけを受け、日比谷公園内に本店を出店。「都民の憩いの場に平和の象徴たる花屋を」との要請に応えたことが、現在の日比谷花壇ブランドの始まりとなった。

進化し続ける老舗の事業領域は、生花小売にとどまらない。個人向けには、フラワーショップ、EC、婚礼装花、ライフサポート。法人向けには、オフィス空間のデザイン、季節装飾、ライセンス事業などを行っている。

官民連携による公園・テーマパーク・公共施設の指定管理、ランドスケープデザイン、都市緑化の保全など、社会インフラに近い領域にも広がる。現在、全国約190カ所の店舗・拠点を持つ。グループ企業14社と連携し、花とみどりの総合企業として独自の位置を築いている。

■花き産業は自然資本産業。環境対応は事業継続の条件へ

そもそも花き産業とは何か。一般的には鑑賞を目的として栽培される植物全般を指す農業の一分野ではあるが、その流通形態は生産、卸売市場、仲卸、小売、冠婚葬祭、家庭消費まで裾野が広い。総消費額は約1.2兆円と推計される。流通面では、卸売市場の存在感が大きく、市場経由率は約7割に上り、全国の卸売市場が流通の基盤を担っている。

日比谷花壇はこのバリューチェーンの中で、生産者、流通、生活者、行政、地域社会をつなぐ接点を持つ。個社の環境対応にとどまらず、業界全体の仕組みづくりに貢献しやすい位置にある。自社で培ったノウハウや知見を横展開しサステナブルの連鎖を構想している。

(出典:農林水産省「花きの現状について」令和8年6月)

では、どのような課題があるのか。松本室長は大きく4つの分野を挙げた。

①土地や気候など自然条件に依存するため、猛暑や異常気象による開花時期のずれや品質低下、病害虫の増加など、気候変動の影響を受けやすい。生産の不安定化は供給や価格にも波及する。

②物流面では、鮮度維持のため温度管理や納期への要求が高く、少量多品目で形状も不揃いなため効率化が難しい。2024年問題を背景に、輸送負担やコスト上昇が産地から小売まで影響を及ぼす。

③冬季の温室栽培では化石燃料による加温が一般的で、燃料高騰は経営を圧迫すると同時に温室効果ガス排出の課題にもつながるといったエネルギー問題。

④ラッピングや吸水スポンジなど石油由来素材への依存が大きく、婚礼・葬儀での使用慣行の見直しが求められている。

ちなみにネット上では「フラワーロス」として大量廃棄が問題視されることがあるという。広く流布する数値の多くは明確な根拠が乏しく、日比谷花壇の販売段階での廃棄量は「5%以下」だとする。雑な印象論はさておき環境配慮というテーマへの対策は着実に進められてきているようだ。

既に同社は店舗運営や商品開発でも具体的な対策を推進してきた。期間限定で展開しているサステナブルショップでは、プラスチック製シールをスタンプに替え、紙素材のPOPやチョークボードを活用。包装資材は100%紙素材のラッピングやバイオマスプラスチックを活用した商品を開発。葬儀分野では石油由来の吸水スポンジを使わない次世代花祭壇システムを展開。

装飾などで使用済みの花を押し花に加工するプロジェクトのほか、公園・公共施設での生物多様性保全や環境教育にも取り組む。グループが関わる管理施設は約1,200施設に及び、都市部における自然接点としての役割も担っている。

「エコ・ファーストの約束」では、花とみどりを通じ、人や地域社会、環境に貢献する姿勢を掲げている。花き業界全体の環境負荷低減に向け、生産者や流通業者などステークホルダーと連携。2035年までにScope1・2・3排出量を2023年比50%削減し、自社事業所では2040年に再エネ100%を達成、2050年のネットゼロ実現をめざしている。

■次の焦点は脱炭素、再エネ業界との連携余地を模索

個社の取り組みが業界全体へ。仕掛け人は日比谷花壇。そんな絵が描かれはじめている。生産、流通、小売など花き関連の関係者が参画する業界横断の組織である一般社団法人 花の国日本協議会では、日比谷花壇の宮島浩彰社長が同協議会の副理事長を務め、環境部会長も兼ねる。協議会では、業界全体のSDGs・環境アクションとして「well-blooming project」を掲げ、自然と人が健やかに共存する産業の姿を打ち出す。

資材削減等は比較的取り組みやすい一方で、物流や温室栽培のエネルギー転換は、個社だけでは解決しにくい。生産者、卸売市場、物流会社、小売、行政、エネルギー事業者が連携しなければ、実効性のある脱炭素化にはつながらない。

今後の焦点は冒頭指摘の通り「まだ業界全体では取り組みが十分に進んでいない脱炭素化」とする同社は、環境配慮型の資材対策に加え、生産現場のエネルギー転換を模索する。具体策として「農地で発電と営農を両立するソーラーシェアリング、初期費用ゼロ円モデルによる再生可能エネルギー導入、温室暖房のヒートポンプ化などの普及」を構想。生産者にとって初期投資の負担は大きく、PPAやリースなどを活用した導入モデルは現実的な選択肢となる。

花の生産地と再生可能エネルギーの適地は重なる部分も多い。日射条件の良い地域では太陽光発電との親和性があり、農地や周辺施設を活用した発電、蓄電池、ヒートポンプ、V2Hなどとの組み合わせ。温室の暖房負荷を下げる技術、再エネ電力の地産地消、余剰電力の活用は、生産現場のコスト安定化にもつながる。再エネ業界にとっても、花き産業は農業分野の脱炭素化を進めるうえで具体的な連携先となる。

同社は花の生産地と再生可能エネルギーの供給地が重なることに着目し、地域の電力循環や地産地消型の取り組みにも可能性を見いだす。花の生産地で生まれた再エネ価値が都市部の消費や地域活動と結びつけば、単なる電力調達にとどまらない意味を持つ。サステナブルな花。生産地、都市、生活者をつなぐ仕組みは、地域創生にも広がり得る。

石原宏高環境大臣と日比谷花壇の宮島浩彰社長(右)

花き産業の環境配慮・脱炭素化は、CO2排出量を削減するだけの取り組みではない。燃料価格に左右されにくい生産体制をつくり、物流の効率化を進め、資材の循環利用を高め、自然資本を守りながら産業を次世代へつなぐ取り組みでもある。花は美しさや贈答文化だけで語られてきたが、その背景には生産者、物流、小売、地域社会、エネルギーがある。そこに環境価値をどう組み込むかが問われている。

日比谷花壇がエコ・ファースト企業として踏み出した一歩は、老舗企業による単独の環境宣言にとどまらない。花き産業の環境対応を「できる企業が進める取り組み」から「業界全体で取り組むべき共通基盤」へ押し上げる意味を持つ。サステナブルな花が特別な商品ではなく、日常の選択肢となるか。老舗が織りなす新潮流は、花とみどりの価値を次世代へつなぐ試金石となるのではないだろうか。

〔参照〕
【開催レポート】6月「環境月間」に合わせ、環境大臣認定「エコ・ファースト企業」の日比谷花壇が花き業界のサステナビリティ勉強会を開催。
【花き業界初】日比谷花壇が環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定
日比谷花壇のサステナビリティ
一般社団法人 花の国日本協議会
農林水産省 花き
花きの現状について(令和8年6月)