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【独自】Trinasolar(トリナ・ソーラー):世界大手太陽光メーカー、蓄電融合でスマートエネルギー領域を本格展開――電力は「創る」から「操る」へ 主戦場のシフトを先取り

2026.04.07

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トリナ・エナジー・ストレージ・ジャパン 劉佳(Liu Jia)取締役とトリナ・ソーラー・ジャパン 伊藤邦泰 製品戦略企画管理部 部長(右)

発電した電力をいかに制御し、価値として活用するか——。太陽光発電を取り巻く環境が転換点を迎えている。これまで発電コストの低下と導入量の増加などが市場拡大の要素となっていた。世界では、太陽光発電と蓄電システムを一体導入することが標準となり、電力の需給調整や市場取引を前提とした運用が広がる。電力は「創る」から「操る」へ。この構造変化を逸早く捉え、事業展開してきたのがトリナ・ソーラーである。スマートエネルギー市場を牽引してきた世界大手の戦略と現在地に迫る。

■世界180カ国、年産120GW超。世界屈指の供給力で築いたトップブランド

Trinasolar(トリナ・ソーラー)は1997年に設立。当初は太陽光発電システムのインテグレーターとして事業を開始したが、現在では太陽光モジュールの製造、発電システムの構築、スマートエネルギーソリューションの提供までを手がけるグローバル企業へと成長した。事業は世界180カ国以上に広がり、年商は約2兆円規模。再生可能エネルギー分野における主要プレーヤーの一角を占める。

その事業基盤を支えるのが、世界屈指の供給力と技術力である。太陽電池モジュールの年間生産能力は120GW(セル105GW/ウェハ60GW)と上流から下流まで一貫した供給体制を構築。太陽電池モジュールの累積出荷量は約290GW超 (2025年6月末時点)、蓄電システムも20GWh以上(2025年末時点)の導入実績を持つ。これら規模の経済を背景に、同社は長年にわたり世界トップクラスの太陽光発電ブランドとしての地位を築いてきた。

日本市場への参入も2010年と比較的早かった。固定価格買取制度(FIT)の導入前後から本格展開。国内の設置環境や施工条件に対応した製品展開を進めるとともに、販売パートナーとの連携を通じて市場基盤を構築。日本においても一定のブランド認知を確立し、安定した供給力と品質を強みとするメーカーとして位置付けられている。

製品軸では高効率太陽電池モジュール「Vertex N」シリーズを主力とし、N型i-TOPConセルを核とした210mmウェハー技術をベースに採用した高出力製品を提供する。210mm大型ウェハをベースに、700W級までの出力帯までラインアップを拡充。直近では3月に最大出力760Wの「Vertex N G3」を発表した。住宅用から産業用、大規模発電所まで幅広い用途に対応する製品体系を整える。

■先行した“蓄電シフト”、再エネの主戦場が変わる?

太陽光発電の普及が進むにつれ、発電量の拡大だけでなく、需給バランスの調整等が課題として浮上してきた。その解として、蓄電システムの重要性が急速に高まっている。同社はこうした変化を見据え蓄電を含めたエネルギー全体の最適化に踏み込んできた。

海外の蓄電池メーカーの中で最も早い部類に入る2015年に蓄電分野へ参入しTrina Storage「トリナ・ストレージ」として事業を拡大。蓄電池セルからエネルギーマネジメントまで垂直統合させることで品質管理とコスト競争力を両立。発電と蓄電を統合したソリューションの提供により、顧客側の運用最適化にも寄与してきた。

住宅・産業用に加え、系統用(ユーティリティ規模)蓄電システムまでのフルラインナップを展開。発電設備との連携を前提とした設計により、太陽光発電と蓄電を組み合わせた一体型のエネルギー利用を支える製品群を形成している。

トリナ・エナジー・ストレージ・ジャパンの劉佳取締役は「世界市場では系統制約などの問題で太陽光発電と蓄電システムをセットで導入することが一般的になっている。単に発電するだけでなく、電力をどのように活用するかが重要な価値になっている」と話す。再エネ導入が一定水準に達した地域では、発電量の拡大そのものよりも、電力のタイムシフトや市場価値の最大化が重視される傾向にあるようだ。

住宅や商業施設における自家消費用途に加え、近年は電力系統の安定化を目的とした系統用蓄電設備、電力市場での取引を前提とした事業用蓄電の導入が進む。欧州や北米では、再エネの出力変動を吸収する手段として蓄電が不可欠なインフラになりつつあるという。

やや過熱気味ではあるが。日本においても同様の動きが見られる。需給調整市場の拡大や系統増強といった旗印を背景に、蓄電システムの導入が加速している。トリナ・ソーラー・ジャパンの伊藤邦泰部長は「太陽光発電の普及が進んだことで、次に求められるのは電力の制御と最適化。蓄電との組み合わせは不可欠であり、用途も自家消費、市場連動、DR制御等へと広がりつつある」と指摘した。

今後の方針について劉取締役は「太陽光発電を中心に蓄電システムを融合させることでシステム全体での最適化を図る。当社は発電と蓄電といった製品からエネマネまでを一体的に提供していくことで、スマートエネルギー市場の拡大と脱炭素社会の実現に貢献していきたい」との意気込みを語った。発電設備としての太陽光から、エネルギーシステムの中核へと役割が変化する中で、同社はその中核領域を狙う。

太陽光発電の導入拡大に伴い、エネルギー市場の構造は大きく変化してきた。発電量の拡大から、電力の価値をいかに最大化するかという段階へ。太陽光発電と蓄電を組み合わせた一体提案は歴史を紐解けば必然だったのかもしれない。グローバル市場での競争は新たな局面に入ったといえそうだ。

〔参照〕
トリナ・ソーラー・ジャパン
トリナ・エナジー・ストレージ・ジャパン