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【読解】営農型太陽光発電の実態:農地転用許可累計 約10万件、営農型は僅か5%も増加傾向

2025.01.02

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(出典:農林水産省HPより)

地域との共存。太陽の恵みを作物とエネルギーに替える。これほど効率的で理想的なカタチが他にあるのだろうか。農業と太陽光発電を同時に行う「営農型太陽光発電(通称:ソーラーシェアリング)」。農業が主体という意味では「営農型ではなく太陽光活用型農業」といった表現が適切ではないかと有識者の指摘もあるが、その実態は。

農林水産省の定義によると『営農型太陽光発電とは、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業』とする。通常3年の一次転用許可は農作物の生産等に支障が出ていなければ再許可される流れ。

(出典:農林水産省HPより)

法整備やガイドラインが策定される以前。2000年代には既に農地の法面等を利用した個人による実証実験は確認されていたが、作物の販売収入に加え、売電や自家消費など農業経営の改善が期待できるとして近年、注目を集める。

太陽光発電設備を設置するための農地転用許可実績調査によると2011年度は僅か18件だったが、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」がスタートした2012年以降に急増。年間1万件近い転用許可が取得され2022年度までの累計では約10万件のぼる。このうち営農を廃止し、産業用メガソーラーなど農地全体を転用して太陽光発電を設置するケースが9割を占める。

一方、並行して営農型もじわり。統計上2013年度に103件が記録され2022年度時点では年間 約1000件の市場規模へと成長。累計では5000件を超えた。農地転用許可に占める割合は僅か5%といえど増加傾向にある。国や自治体、金融機関による支援、相談体制、野菜・果樹・観葉植物などの生産ノウハウやビジネスモデルが蓄積され、AI/IoTを組み合わせるなどスマート農業に進化しつつあるようだ。

〔参考〕
農林水産省HP「営農型太陽光発電について」
再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可
営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2024年度版)
太陽光発電設備を設置するための農地転用許可実績