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【政策】国土交通省:建築物のライフサイクルカーボン制度で中間案 2028年度の制度開始を視野に

2025.10.02

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(出典:HPより)


国土交通省は、建築物の建設から解体までの全過程で排出される温室効果ガス(LCCO₂=ライフサイクルカーボン)の削減を促す新制度の中間とりまとめ案を公表した。建築分野は国内のCO₂排出量の約4割を占め、脱炭素社会の実現に向けた対策が喫緊の課題となっている。政府は2028年度をめどに評価制度の本格運用を開始する方針で、算定ルールの統一や評価結果の表示制度創設などを進める。

 背景には、気候変動に伴う自然災害の激甚化とともに、国際的な規制強化がある。欧州連合(EU)は2028年以降、一定規模以上の新築建築物にLCCO₂報告を義務づける方針を決定。国内でも、時価総額3兆円超の上場企業に対し同年からScope3(サプライチェーン全体)の排出量開示が求められる見通し。建築分野の排出削減を巡る対応は、企業価値や国際競争力にも直結する。

 中間案は、LCCO₂削減に向けた課題を整理し、早急に講ずべき施策の方向性を提示した。最大の課題は、建築主、設計者、施工者、建材・設備メーカーといった関係者の役割が明確でない点だ。国による統一的な算定ルールや評価基準が存在せず、設計内容の比較検討が難しいことも普及を妨げている。評価結果を示すルールや第三者認証制度も整っておらず、環境性能を市場で訴求しにくい状況。

 このため国交省は、算定・評価ルールの策定とともに、各ステークホルダーの役割と具体的な取り組み指針の明確化を検討する。加えて、評価結果の表示制度や第三者認証の創設により、削減努力を可視化して市場で評価される仕組みの構築を目指す。国の庁舎での先行実施や、優良事業者の公表といった誘導策も盛り込む。

 評価の実施促進策としては、大規模建築物(延べ床面積2000平方メートル以上)の新築・増改築時に、設計者が建築主に評価結果や削減策を説明する仕組みの導入を検討する。特に5000平方メートル以上のオフィスビルなどでは、国への届出を義務づける方向だ。Scope3開示への対応が迫る大手不動産業者に加え、中小建設会社が手がける小規模建築物では人材や技術力への支援が必要とされる。

 課題の一つが、建材・設備のCO₂排出量原単位の整備。低炭素製品の選択肢を拡充するため、排出量データの整備方針や表示ルールを検討する。算定・評価や原単位整備には技術的・金銭的なハードルも多く、専門人材の不足も指摘されている。国は産学官連携で人材育成と体制整備を進める方針。

 住宅分野では、購入者の脱炭素意識が依然として高くなく、コスト面の配慮も課題として残る。市場牽引のためには、国や先進企業による先行的な取り組みの拡大が不可欠とされる。

 政府は2025年4月に「建築物のライフサイクルカーボン削減に関する関係省庁連絡会議」を立ち上げ、基本構想を策定した。今回の中間案はそれを踏まえたもので、制度の詳細設計と法制度整備が今後の焦点となる。LCCO₂削減への取り組みは、建築業界にとって新たな競争条件となりつつある。

(出典:HPより)

〔参照〕
第6回 建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を 促進する制度に関する検討会を開催します~これまでの議論を総括し、制度のあり方(中間とりまとめ案)について議論します~
第6回(開催:令和7年9月30日 )
07_資料4-2_中間とりまとめ案(概要)(PDF形式) PDF形式