【焦点】ロゴスホールディングス × ライフデザイン・カバヤ:「住宅を伸ばし切る」か、「事業を広げる」か――大手を凌駕するトップビルダー2社が語った生き残り戦略

人口減少、新設住宅着工戸数の縮小、資材価格や人件費の上昇、人材不足――。住宅業界を取り巻く環境が厳しさを増すなか、「地方」を起点に成長を続ける住宅会社は何を見ているのか。
日本優良ビルダー普及協会(JGBA)は8月20日、「地方工務店の逆襲」をテーマに、ロゴスホールディングスの池田雄一社長とライフデザイン・カバヤの窪田健太郎社長によるトークセッションを開催した。会場63人、オンライン48人の計111人が参加した。
北海道・帯広から全国展開へ進み、東証上場を果たしたロゴスホールディングスと、岡山を中心に住宅事業を展開し、9年連続地域No.1の実績を持つライフデザイン・カバヤ。現在の売上規模はともに500億円台に達する一方、その成長戦略は対照的だ。
池田社長が目指すのは、住宅会社としての競争力を徹底的に磨き、新築住宅を全国へ広げる成長モデル。一方の窪田社長は、住宅の高付加価値化を進めるとともに、非住宅、木造建築、海外などへ事業領域を広げ、複数の成長エンジンをつくる。
「地方工務店はこれからどう生き残るのか」。約2時間にわたる講演と対談から浮かび上がったのは、唯一の正解ではなく、自社の強みを見極め、経営者自身が進む方向を決断する重要性だった。
■3人から始まったロゴス、北海道から全国40拠点へ
最初に登壇した池田社長は、ロゴスホールディングスの成長の軌跡を紹介した。
池田社長はハウスメーカーで住宅設計に携わっていたが、35歳の時に勤務先が倒産した。再び会社員として設計を続けるか、自ら住宅会社を立ち上げるか。その選択の末、2003年に北海道帯広市で創業した。
帯広は冬には氷点下25度、夏には35度程度まで達することもある寒暖差の大きな地域だ。そこで培った高断熱・高性能住宅を、一般の会社員にも手が届く価格で提供することを事業の原点に据えた。
創業時の社員は3人。近隣工務店の一角を借り、机3台から事業を始めた。当初から掲げた目標は「日本一の住宅会社」。社員3人の段階から上場も将来目標として共有していたという。
もっとも、成長は一直線ではなかった。受注戸数や売上高は伸びても利益が残らず、上場準備を始めても管理体制の整備が追いつかなかった。証券会社や監査法人への費用負担だけが増える時期も経験した。
大手ハウスメーカーの傘下に入る選択肢もあったが、地域で培ったブランドや技術を残す道を選び、最終的には外部ファンドから資本と経営ノウハウを受け入れた。
池田社長は当時を振り返り、戸数と売上を増やすことばかりに目が向いていた自分に対し、ファンド側から「利益を出せる企業体質」をつくる視点を学んだと語った。その後、上場を実現し、北海道や新潟などの住宅会社をグループ化。帯広の小さな工務店から、年商500億円規模、年間約1600棟、全国約40拠点を擁する企業グループへ成長した。
成長を支える強みとして池田社長が挙げたのは、①北海道で磨いた高品質住宅を適正価格で提供する商品力、②総合住宅展示場に依存しないデジタルマーケティング、③DXによる効率的な業務運営――の3点だ。
地方住宅会社をグループ化する際にも、地域のブランドや社員、施工技術を残す。ロゴス側が集客、採用、教育、DXなどの共通基盤を提供し、地域企業の生産性を引き上げる考え方を採る。
目標に掲げるのは、地域の有力工務店が連携する「日本一の工務店アライアンス」。後継者不足などを抱える地域企業を束ねながら、大手ハウスメーカーとは異なる全国ネットワークを形成していく構想だ。

■住宅一本足から転換、ライフデザイン・カバヤが進める「複数エンジン経営」
続いて窪田社長がライフデザイン・カバヤの取り組みを紹介した。
窪田社長も建築畑の出身で、20代に現場監督、30代以降に設計、営業、役員などを経験した。当初は40歳で独立する人生設計を描いていたが、会社から将来の社長候補として役員就任を求められ、そのまま経営を担うことになった。トップに就任した2015年の売上高は約150億円。そこから約10年で年商500億円規模まで拡大させた。
ただ、成長を住宅戸数だけには求めていない。
窪田社長は社長就任時から「将来、住宅だけでは食べていけないかもしれない」と考え、既存事業、成長事業、新規事業を組み合わせる経営へ舵を切った。注文住宅を核にしながら、新たな事業を継続的に立ち上げ、会社全体を成長させる戦略だ。
住宅では戸数を追うモデルから、価値と利益を重視する高付加価値型へ移行している。独自の木造技術を磨き、繰り返し地震を受けても住み続けられる住宅を目指す。「自宅そのものを避難所にする」という考え方を商品価値として打ち出し、西日本では主力商品に育てている。価格帯を引き上げる一方、競合する相手も地域ビルダーから大手ハウスメーカーへ変わってきたという。
成長分野として力を入れるのが非住宅だ。マンション、工場、物流施設、公共施設などを手掛け、約8年間で同部門を約190億円規模まで育てた。スーパーゼネコンが都市部の大型案件へ集中することで、地方では施工力や技術者を確保した地域企業に受注機会が広がっているとの見方を示した。
木造非住宅のフランチャイズ展開にも取り組み、加盟企業は約60社。さらに東南アジアを見据え、ベトナムなどで木造住宅関連の取り組みを進めるなど、事業領域を国内住宅市場の外側にも広げている。
■「住宅市場は厳しい」「厳しさは一つもない」――冒頭から割れた市場観
後半のトークセッションは、現在の住宅市場をどう見るかという問いから始まった。
窪田社長は、人口減少や資材高、住宅価格の上昇に所得の伸びが追いついていない点を挙げ、「厳しいことに変わりはない」と分析した。一方で、淘汰が進む市場では特徴を持った強い会社に顧客が集中するため、そこにはチャンスもあるとした。
池田社長の見方は正反対だった。
「住宅業界に厳しさは一つもないと思っている」
住宅業界は大手であっても全国市場を圧倒するほどのシェアを持っていない。市場全体が縮小するかどうかよりも、地域で自社が何棟を獲得できるかの方が重要との考え方だ。
池田社長は、全国の飲食市場を気にする一軒のラーメン店に例え、自社のシェアが小さい段階では、市場縮小より「1棟でも多く顧客から選ばれること」に集中すべきだと説いた。
住宅市場を厳しいと見て事業を分散する窪田社長と、巨大市場にはまだ獲得余地があるとして住宅に集中する池田社長。最初のテーマから、2人の経営思想の違いが鮮明になった。

■100棟、100億円――成長企業がぶつかった「壁」
会社が成長する過程で直面した壁についても、それぞれの経験が語られた。
池田社長が挙げたのは「100棟」だった。
創業直後は社長自身がトップセールスであり、設計者であり、会社運営のあらゆる業務を担う。会社の未来を考え、仕組みをつくり、人材を育てるという本来の経営者の仕事に時間を振り向けられるようになったのは、年間100棟を超えた頃からだったという。
そこから、自分が抱えていた仕事を社員へ任せる経営へ切り替えた。短期的には売上が落ちる可能性があっても、5年後、10年後の成長を考えれば組織化を避けて通れない。信頼していた役員や幹部が退職する経験も重ねたが、その後も新しい人材に仕事を任せ続けたことが成長につながったと振り返った。
一方、窪田社長が感じたのは「100億円の壁」だった。
自身が入社した約30年前、同社は社員約60人、売上高約50億円だった。売上高100億円までは成長したものの、その水準からなかなか抜けられない。突破口になったのが、事業部を増やすことだった。
一つの住宅商品、一つの事業だけを拡大するのではなく、新しい事業をつくり、成長の源泉そのものを増やす。「2~3年に1回は新規事業をつくる」とし、最初は経営者自身が深く関与し、軌道に乗れば社員へ任せていく。その繰り返しが現在の多角化につながっている。
■新規事業か、本業集中か――失敗への向き合い方も正反対
新規事業を巡っても2人の意見は割れた。
窪田社長は、新しい事業には失敗が付きものとの立場を取る。過去には新事業で想定していた補助金が受けられず、大きな赤字を負担したケースもあった。しかし、金銭的な損失をそのまま「失敗」とは捉えない。
経験が蓄積されれば、その失敗は次の事業の資産になる。「動いていれば必ずチャンスは巡ってくる」。経営者自身が先頭に立って動くことを重視する。
対する池田社長は、新規事業への安易な進出には否定的だ。
自身も過去に海外住宅事業などへ進出し、大きな失敗を経験した。新築住宅が伸び悩んだからといって、収益性がありそうな別事業へ簡単に手を出すことには慎重で、「まず新築で行けるところまで伸ばし切る」と強調した。
ただし、M&Aは別と考える。住宅会社であれば事業の要点を理解でき、買収後に自社の集客、採用、教育などのノウハウを導入して成長できるか判断できるためだ。
民事再生企業への支援を決めた背景にも、池田社長自身が勤務先の倒産を経験したことがある。建築途中で住宅会社が倒産し、顧客や社員が苦しむ姿を目の当たりにした。「同じ思いをさせたくない」という思いと、グループ入り後もブランドを残して成長できるという事業判断の双方から支援を決めたという。
■大手と戦う武器は「商品力」か「コスト構造」か
地方工務店が大手ハウスメーカーと競争するために必要なものは何か。
窪田社長は「特徴のある商品」を挙げた。
大手ハウスメーカーの住宅価格が上昇するなか、地方企業も同じような住宅をつくるだけでは競争が難しくなる。そこで研究開発部門を設け、独自の木造技術を磨いてきた。価格だけではなく、「なぜこの会社で建てるのか」を説明できる商品をつくり、大手と同じ土俵で競争する戦略を選んだ。
池田社長が挙げた武器は「粗利を低くできる会社」であることだった。
ロゴスHDは固定的に発生するコストを抑えることで、粗利率が低くても営業利益を残せる構造をつくり、その分を販売価格へ還元する。
総合住宅展示場への出店を避け、デジタル集客を活用する。DXで移動時間を削減する。本社などの固定費も極力増やさない。人件費については優秀な人材確保のため必要な投資と考え、それ以外の費用を細かく管理する。
「高い価値をつくり、単価を上げる」ライフデザイン・カバヤと、「生産性を上げ、適正価格を実現する」ロゴスHD。方法は逆でも、自社がどこで競争優位をつくるのかを明確にしている点は共通する。
■これから必要なのは「生き残るための強み」
セッション終盤、今後の住宅業界について池田社長は、大手への寡占化が進む可能性を指摘した。
しかし、大手ハウスメーカーだけが残れば、消費者の住宅選びの選択肢は狭まる。地域には優れた工務店が多く、その生産性を高めることができれば、大手と競争しながら地域に残ることができる。そのために自社のDXや集客、採用、教育の仕組みを地域企業へ提供し、一緒に成長する企業連合をつくる構想を描く。
窪田社長は、住宅事業について中高価格帯へシフトし、戸数ではなく利益を重視する戦略を改めて示した。そのうえで住宅以外の事業を伸ばし、会社全体の成長を確保する。
市場環境には厳しい見通しを示しながらも、「自分で考えて、決めて、行動するしかない」と語った。答えが最初から見えているわけではなく、経営者が試行錯誤し続ける姿勢そのものが重要との考え方だ。
最後に「地方工務店の共存」について問われると、ここでも2人の個性が表れた。
池田社長は、地域工務店同士が手を取り合い、地域に根差した住宅会社が残ることを理想像として示した。
窪田社長は、より競争原理を強調した。企業同士が共存を望むだけでは市場では生き残れない。最終的に会社を選ぶのは消費者であり、競争は避けられない。その中で必要なのは、自社の「ストロングポイント」を経営者自身が明確に説明できることだという。
「自社の強みは何か。それをどう展開し、どんな要素を加えて成長させるのか」
それに答えられない経営者は、これからの住宅業界で生き残ることが難しくなると指摘した。
住宅市場の縮小を前提に新たな事業領域へ挑むのか。それとも、まだ小さな自社シェアに目を向け、本業をさらに伸ばすのか。高付加価値化するのか、徹底した生産性向上によって価格競争力を磨くのか。
池田社長と窪田社長が示した答えは異なる。
だが、共通していたのは、市場環境を理由に立ち止まらないことだった。自社の強みを定義し、10年後、20年後から逆算して今の意思決定を重ねる。必要なら組織を変え、事業を変え、仲間を増やす。
地方にいることは、もはや成長できない理由にはならない。
北海道・帯広から全国へ進むロゴスホールディングスと、岡山から住宅、非住宅、海外へ領域を広げるライフデザイン・カバヤ。2人の経営者が示した「地方工務店の逆襲」とは、大手の戦い方を真似ることではなく、自らの勝ち筋を決め、それを徹底して磨き続けることなのかもしれない。

〔参照〕
▷2026年8月20日(木)「地方工務店の逆襲」ロゴスホールディングス池田社長 × ライフデザイン・カバヤ窪田社長 トークセッション~「東証上場」×「9年連続地域No.1」地方から日本を変える!業界を牽引する経営者の視座を公開~を開催しました
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