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【独自】Canadian Solar:世界大手太陽光発電メーカー、蓄電事業に本腰「2本柱でスマートエネルギー企業へと躍進」年産30GWh超の製造拠点構築

2025.03.03

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“What is your dream ?”
その問いに彼は「十年以内に2本の足で立つことだ」と応えた。それは太陽光発電と蓄電システムを融合させ、スマートエネルギー企業へと進化させる宣誓のようだった。世界大手が見据える未来とは。米国著名雑誌『TIME』の気候変動対策において最も影響力があるリーダー100人に選出された創業者 Dr. Shawn Qu(ショーン・クー会長)と、25年1月にカナディアン・ソーラー・ジャパンの代表取締役に就任したブリース・ル・グイック社長に訊いた。

同社は2001年に北米カナダ・オンタリオ州で創業した太陽電池メーカー。当時の市場規模はグローバルで1GWにも満たなかったことから、現代風に言えば、可能性に賭けた“スタートアップ”だった。05年に単結晶モジュールの生産を開始。07年以降、セル、インゴット、ウエハといった垂直統合型の生産体制を確立。 

再エネ導入が先行した欧州を皮切りに。今や世界160カ国以上に拠点を設け市場を牽引するグローバル企業として名を馳せる。年商15億ドル(≒2200億円規模)。太陽電池モジュール生産能力60GW超。年間出荷実績はここ数年30GW程度で推移している。累積では世界導入量の約1割に相当する142GWを普及させてきた。 

日本国内へは余剰電力買取制度がスタートした09年に外資系として最も早い段階で新規参入した1社として知られ、国内住宅設置実績は20万棟を超えるなど社会に根を張る。

世界市況についてショーン・クー会長は「太陽光発電の需要は拡大基調にある。直近の25年は前年比1.5倍程度の600GWを超え、30年以降には年間1TW(=1000GW)市場がみえている」と分析。データセンター、AI、電気自動車などの電力需要増が牽引していくという。続けて「蓄電市場も同様にTWh規模の需要が見込まれる」と観る。

同社は20年頃から各国の太陽光発電所向けに系統・産業用の蓄電プロジェクトを展開。21年には子会社『e-STORAGE』を設立し累計8GWhの実績を積み上げてきた。自前での生産にも徐々に切り替え年産30GWh超の製造拠点を構築するなど本腰を入れる。

今後の目標について「太陽光発電と同様に2030年に蓄電事業でもTier1をめざしたい。そして、スマートグリッドやVPPといった幅広いビジネスを展開することで世界のカーボンニュートラル実現に貢献していく。この他、先端医療への投資や日本国内への製造拠点開設などを構想している」と語った。

具体的な日本国内市場への戦略についてはカナディアン・ソーラー・ジャパンのブリース・ル・グイック社長が「高効率太陽光発電とハイブリッド蓄電システム『EP Cube』を組み合わせ、自家消費市場を後押ししていく。産業用に関してはグローバルで展開している自社生産の産業用パワーコンディショナー(PCS)を起点に製品単体とバンドルで柔軟に対応していく」との方針を話した。

各国の需要拡大に合わせて展開すること四半世紀。太陽電池専業からスマートエネルギー企業へと躍進。世界大手の未来像は明確だった。

〔参照〕
Canadian Solar
カナディアン・ソーラー・ジャパン
e-STORAGE
Investor Presentation December 2024