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【ゼミ】三菱地所グループHOMETACT:住宅価値を上げる新機軸、スマートホーム化が示す「選ばれる物件」の条件

2026.05.27

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住宅のスマートホーム化が、不動産業界で新たな差別化策として存在感を高めている。三菱地所グループのスマートホームサービス「HOMETACT」を展開するHOMETACTは、5月26日にオンラインセミナーを開き、スマートホーム導入による物件価値向上や、賃貸・分譲マンションでの具体的な活用策を示した。登壇した戌角太一執行役員CPOは、スマートホームを単なる先進設備ではなく「不動産が選ばれ続けるための基盤」と位置付けた。

スマートホーム市場は拡大局面にある。住宅設備として導入が進み、国内市場規模は2025年に1.7兆円、2030年には3.3兆円に達するとの推計もある。家電や照明、鍵、給湯器、カーテン、インターホンなどをネットワークでつなぎ、アプリや音声、センサーを通じて操作・制御する仕組みは、これまで「便利な暮らし」の文脈で語られることが多かった。

ただ、不動産事業者にとって重要なのは、便利さそのものよりも、導入によって物件の競争力を高められるかという点にある。戌角執行役員は、スマートホームの価値を「住む人にとって心地よく、建てる人やオーナーにとって資産価値を高め、管理する人にとって運用負荷を下げるもの」と説明した。従来、不動産価値は竣工時をピークに経年で下がり、リフォームによって価値低下を補う考え方が一般的だった。スマートホームは、設備を大きく入れ替えなくても住まいの体験価値を高め、家賃や売価、リーシング速度に結び付ける「攻めの不動産DX」となる可能性を持つ。

■賃料上昇・空室短縮へ、スマート化が差別化の新たな一手に

賃貸住宅では、インターネット無料、オートロック、宅配ボックスなどが長く人気設備の上位を占めてきた。これらはすでに多くの物件に普及し、差別化要素としての鮮度は薄れつつある。その次の一手として注目されつつあるのがスマートホーム化である。

賃貸では短期的に、競合物件との差別化による賃料上昇や空室率低下が期待できる。長期的には、快適な住環境により入居期間が伸び、収益の安定やオーナー向けブランディングにもつながる。分譲では、モデルルームなどで実際に体験してもらうことで、設備や間取りだけでは伝わりにくい「暮らしの快適さ」を直感的に訴求できる。集客だけでなく、成約率を高める役割も見込める。

同社によると、HOMETACT導入住宅の居住経験者のうち、再びスマートホームに住みたいと回答した人は約88%に達した。入居者が一度体験すると、次の住まい選びでも同様の機能を求める傾向が強まる。これは、賃貸から分譲への住み替えや、同一ブランド内での顧客接点維持にもつながる。

具体的な効果として、既存住宅でリフォームを伴わずにスマートロックや赤外線リモコンなどを導入し、10%程度の賃料上昇を実現する例が出ている。首都圏では20〜30%程度の賃料上昇が見られるケースもあるという。築年数の経過した物件では、大規模改修だけに頼らず、スマートホームによってターゲット層を広げる動きもある。学生向け物件であっても、スマート化を訴求することで若手社会人などに対象を広げ、入居促進につなげる事例が紹介された。

重要なのは、機器の数やスペックを前面に出すことではない。仲介会社や入居希望者に対し、「行ってきます」の一言で照明やエアコンがオフになる、「おやすみ」でリビングの照明が消え寝室が適度に暗くなるといった生活シーンで伝えることが、記憶に残る訴求となる。家賃が上がる局面では、単に高くなった理由を説明するだけでなく、「少し高くても住みたい」と思わせる明確な体験価値が必要になる。

■鍵・照明・給湯を横断連携、長く使える運用体制が普及の鍵

スマートホーム導入で課題となるのは、導入後の運用と長期利用への対応である。家電量販店などで購入できるガジェット型の機器は、個人利用では手軽だが、賃貸や分譲の住宅設備として組み込む場合、入退去時の設定変更や利用者情報の削除、トラブル対応などの運用負荷が発生する。不動産に組み込むスマートホームでは、BtoBtoC型の仕様と、長期利用を前提としたサポート体制が欠かせない。

HOMETACTは、複数メーカーの機器をまとめて管理・操作できるプラットフォームとして設計されている。鍵、照明スイッチ、給湯器、エアコンなどのビルトイン機器を横断的につなぎ、入居者はログインするだけで利用できる。入居前に設定を完了させるため、利用者自身が複雑な接続作業を行う必要がない。利用中の問い合わせには365日体制で対応し、一部では駆け付けメニューも用意するなど、使えない状態をつくらない運用を重視している。

特徴的な対応機器の考え方。特定メーカーの機器に閉じるのではなく、各メーカーが長年培ってきた鍵、給湯器、照明などの技術や品質を活かし、ソフトウェア側で統合する。赤外線、API、ECHONET Lite対応ハブなど、複数の接続方法を用意することで、物件タイプや導入目的に応じた構成を選べる。Matter、Thread、UWB、デジタルキーなどの新技術にも対応しながら、過去の物件と新築物件の双方を長く使える状態に保つ。

アセット別の構成も変わる。ワンルーム賃貸では、スマートロックや赤外線リモコンを組み合わせ、コストを抑えながら鍵を渡さない運用やエアコン・照明の一括操作を実現する。ファミリー賃貸では、居室が複数あるため、リビングだけでなく各部屋の照明やエアコンまで対応させることで、外出時や就寝時の体験価値が高まる。分譲マンションでは、電気錠、エントランス制御、エレベーター制御、機械警備、分電盤連携などを組み合わせ、高付加価値な住宅体験や省エネ訴求につなげられる。

スマートホームは、もはや一部の先進層向けのガジェットではない。住宅設備として組み込まれ、入居者の満足度、オーナーの収益性、管理会社の運用効率を同時に高める基盤へと変わりつつある。住宅市場で価格上昇が続くなか、単に賃料や販売価格を引き上げるだけでは、入居者や購入者の納得は得にくい。暮らしの体験をわかりやすく変えるスマートホームは、価格に理由を与える装置となる。HOMETACTが示したのは、5年後、10年後も選ばれる物件づくりに向け、設備を「導入する」だけでなく、価値として「伝え、使い続けてもらう」ことの重要性かもしれない。

〔参照〕
スマートホームの「今」を知り、差別化に変える~三菱地所グループ HOMETACT・CPOが語る、5年後も価値が向上する物件づくりの具体解~
HOMETACT