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【政策】電子情報技術産業協会(JEITA):JC-STARで「安心」を可視化 家電の聖地・池袋で普及啓発、IoT家電は“好きだけど怖い”から“目印で選べる”へ

2026.03.01

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一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)と一般社団法人大手家電流通協会(CED)は2月26日、東京都豊島区で「JC-STAR×スマートホーム機器 普及啓発イベント『未来の暮らしを、もっと安全に。JC-STARで選ぶIoT』」を開催した。インターネットにつながる家電・住設機器が生活の基盤になりつつある一方で、サイバー攻撃や個人情報漏えいのリスクは増している。国の認証制度「JC-STAR」によって、生活者が“価格・性能”に加えて“安心”を基準に選べる環境づくりを進める。会場では制度説明に加え、IoT機器へのハッキングのデモンストレーションや、量販店での訴求に使うポスター・小冊子が披露された。

経済産業省 商務情報政策局サイバーセキュリティ課長の武尾伸隆氏は、IoT機器が急速に普及するなかで「便利になった一方、サイバー攻撃のリスクが増している」と指摘。ユーザー側が「どれが安全なのか」を判断しづらい現状を踏まえ、検討会(2022年~)を経て制度化したのがJC-STARだと説明した。制度は2025年3月から一部運用が始まり、既に多くの企業が製品を登録。今後は基準の高度化に加え、政府・自治体調達や補助金要件への活用、諸外国との連携も視野に普及を加速させる方針を示した。

JEITAスマートホーム部会長の丹康雄氏(北陸先端科学技術大学院大学 副学長・教授)は、スマートホームが“米国発”と見られがちな点に触れつつ「日本は1970年代末からホームオートメーション、ホームネットワークとして独自に発展してきた」と歴史を整理。2015年以降、スマートスピーカーなどを契機にインターネット文化と融合が進み、利便性が増す一方でセキュリティが新たな前提条件になったと語った。作る側(メーカー・開発)と、届ける側(流通・小売)が連携してイベントを実施することで普及啓発の加速を狙う。

CED常任委員でヤマダホールディングス取締役兼執行役員の長野毅氏は、販売現場ではこれまで「安全だと思います」といった抽象的説明に頼らざるを得なかったと振り返り、「星のラベルが付くことで、お客様に自信を持って安全な製品だとお届けできる」と述べた。協会としては、全国の量販店でラベルの意義を正しく伝えるスタッフ育成や売り場訴求を進め、安心・安全な市場環境を作りたい考え。

■“買った時点で安全”を求める家電こそ対象 IPAが制度設計を解説

制度説明を担った情報処理推進機構(IPA)フェロー/技術評価部 部長の神田雅透氏は、JC-STARの対象を「後からセキュリティソフトを追加できるPC等」ではなく、購入後にユーザーが積極的に対策を入れ替えることが想定しにくい「ネット家電・情報家電」に置く理由を強調した。家電は設置時こそマニュアルを見るが、一度動き出すと更新や設定を見直す機会が少ない。しかもIoT機器に感染するマルウェアは正常動作に影響を与えないことが多く、侵害されても気づかれにくいという。

こうした前提のもと、JC-STARは開発段階から対策を組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」を求め、脆弱性対応やサポートを含む“製品ライフサイクル”での責任を重視する。適合要件は4段階で、今回店頭で訴求する「星1」は最低限の統一基準に位置付く。ポイントは、マルウェア感染・ボット化を防ぐ最低限の防御に加え、メーカーがどの程度の期間、脆弱性対応を含むサポート責任を負うのかを明確にすること、さらに廃棄・譲渡時に個人データを消去できる仕組みなど、生活者リスクに直結する要件を含む点にある。

(出典:HPより)

制度は作って終わりではなく、買われなければ意味がない。普及のためにラベルを生活者の購買行動に結び付けることが欠かせない。実際、家電は「セキュリティの高さだけ」で購入が決まる商材ではない。そこで今回、店頭向けのポスターやポップは「家電も対策が必要」という気づきを与えたうえで「星マークが付く製品から好みの機能・デザイン・価格で選ぶ」という導線を狙う。

■徳井氏「家電好きだから怖い」 ハッキングデモで“玄関口”の重要性を体感

イベントの特別ゲストとして登壇した“家電芸人”の徳井義実氏(チュートリアル)は、制度説明のパートについて「家電に興味が薄い人は眠たくなったかもしれないが、僕はめちゃくちゃ楽しかった」と語り、会場の空気を和らげた。一方で、IoT家電の導入については「家電が好きで新しいものも好きだが、セキュリティが不安で、自宅では猫の自動給餌器など数個にとどまっている」と率直に吐露した。知識があるからこそ、つながることで“何が起き得るか”を想像できてしまい、踏み切れないという。

この“好きだから怖い”という感覚は、まさに普及の現場が直面する課題でもある。徳井氏は、生成AIを搭載した家電の説明を受けるなかで「多機能になればなるほど使いこなせない時代があったが、AIが入ることで話し言葉で使える。これからが本番」「ボタンは減っていき、喋りかければいい」と、利便性の“敷居が下がる未来”を描いた。そのうえで「だからこそセキュリティが大事」と述べ、便利さと安全性が表裏一体であることを生活者の言葉で補強した。

その流れを決定づけたのが、積水ハウスによるハッキングデモだった。積水ハウスは2021年からスマートホームを標準搭載し、生活ログを預かって価値に変換するサービスを展開。プライバシー保護を最重要テーマに据える。デモでは、脆弱な環境と、JC-STAR適合機器(例:バッファローのルーター)を対比し、周辺SSIDの探索、通信情報の収集、辞書攻撃によるパスワード解析、侵入後の接続機器探索、対象機器への攻撃といった流れを段階的に示した。脆弱な環境では短時間で機器が停止する様子が示され、会場から驚きの声が上がった。

一方、JC-STAR適合機器では同様の手順が途中で弾かれ、攻撃が次のステップに進めないことを確認。徳井氏は「ルーターは家の玄関口。ここに入られたら終わり」と反応し、「ここでストップするなら安心」と“目に見える防御”の価値を言語化した。制度の意義を「ラベルが付いているから安全」ではなく、「侵入の起点で止まる」こととして体感させた点が、このイベントの核心だった。

会場では協賛各社によるIoT製品も紹介された。シャープは10年にわたるIoT家電の取り組みと生成AIの活用を示し、パナソニックはエアコンや冷蔵庫のアプリ連携、見守り機能、エネルギーマネジメントの方向性を提示。三菱電機はエコキュートを例に、外出先からのお湯張り、太陽光発電との連動、見守り、さらには将来のデマンドレスポンスによる系統調整への貢献まで、住宅設備が“社会インフラ”と接続される未来像を描いた。便利さが増すほど、生活者が預けるデータも増える。だからこそ、安心を担保する仕組みが市場の前提条件になる。

ポスター・小冊子の披露も、普及を“売り場の会話”へ落とし込む工夫だ。徳井氏はJC-STARのロゴを「どこかのアイドルグループのロゴみたい」と例えつつ、「店員さんに『あれが付いてるやつどれですか』って聞けばいい」と語り、生活者が使える“最短の行動”に変換した。制度説明、製品紹介、攻撃デモ、販促ツール――不安の正体を可視化し、選び方まで提示する一連の設計は、スマートホーム普及が次の段階に入ったことを示す。

IoTが暮らしの当たり前になるほど、セキュリティは“詳しい人が頑張る領域”ではなく、生活者が選択できる品質指標であるべきかもしれない。JC-STARは、そのための共通言語になりえるか。店頭での訴求と製品拡大が進めば、「好きだから怖い」を乗り越え、「目印で選べる安心」がスマートホーム普及の土台となる日も近い?今後の動静に注目が集まる。

(提供:一般社団法人電子情報技術産業協会)

〔参照〕
セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)
セキュリティラベリング制度(JC-STAR)についての詳細情報
JC-STAR 制度普及へ、製販連携を本格推進 家電も住まいも“つながる”時代に、IoT を安心に。暮らしのセキュリティをより確かなものに