【太陽光発電】プラチナ構想ネットワーク:営農型太陽光を地域主導の社会実装へ、制度改正を機に農業・エネルギーの一体化を議論

農地で作物を育てながら、その上部空間で電気をつくる営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が、新たな段階に入ろうとしている。焦点は導入量の拡大だけではない。適切な営農を継続し、農業者の所得向上や農地の維持、地域の脱炭素、食料・エネルギー安全保障につながる設備を、地域自らがどう選び、育てるか。国による制度見直しを契機に、議論は「導入の是非」から「地域でどう社会実装するか」へ移り始めた。
プラチナ構想ネットワークは9月7日、東京都内でプラチナシンポジウム「望ましい営農型太陽光発電と地域主導の制度設計」を開いた。会場約100人、オンライン約250人が参加。農林水産省、自治体、農業・エネルギー関連企業、研究者、業界団体などが登壇し、制度、農業、技術、事業モデルの各面から今後の姿を議論した。
主催したのは、プラチナ構想ネットワークが2026年4月に立ち上げた「営農型太陽光発電社会実装推進コンソーシアム」。同ネットワークは「地球が持続し、豊かで、すべての人の自己実現を可能にする社会」を「プラチナ社会」と位置づけ、自治体、企業、大学などをつなぎながら社会課題の解決と産業化を進める。再生可能エネルギーは、その重点領域の一つに位置づけられている。
「プラチナ再生可能エネルギー産業イニシアティブ」では、2050年の総エネルギー需要を電力換算で2000TWhと見立て、その8割にあたる1600TWhを国内の再生可能エネルギーで供給する将来像を描く。制度改革と社会実装型ビジネスモデルを並行して進め、海外資源への依存度が高い日本のエネルギー構造を転換する構想だ。営農型太陽光は、その社会実装活動の第1弾に選ばれた。
開会にあたり小宮山宏会長は、日本各地に存在する課題解決の取り組みを束ね、産業へ育てることでプラチナ社会の実現を目指す考えを説明した。森林、再生可能エネルギー、人材、健康、観光などを相互に結び付け、一つの施策が複数の社会課題の解決につながる構造をつくる。その具体策の一つとして営農型太陽光を位置づけた。
■「悪いものを止める」から「良いものを伸ばす」へ
営農型太陽光を巡っては、普及の一方で農業との両立が十分に図られていない案件も表面化してきた。
農水省によると、営農型太陽光は6000件を超えるまでに広がった一方、調査対象となった約5000件のうち約1200件、24%で下部農地の営農に何らかの支障が確認された。収量減少や生育不良などが目立ち、発電を優先するあまり農業が形式化した案件も課題となっている。
こうした状況を受け、農水省は「望ましい営農型太陽光発電」の考え方を整理した。基本理念には、適切な営農継続を大前提とすること、農地の食料生産基盤としての機能を維持すること、農業者の所得向上や経営発展につなげること、地域と共生し地域活性化に資することの4点を据えた。
制度面でも転換を図る。国が農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本方針を示し、市町村が地域の農業方針などを踏まえた基本計画を策定。事業者の設備整備計画を市町村が認定する仕組みへ移行する方向となる。従来、個別の一時転用許可を中心に判断してきた仕組みから、地域全体の農業政策の中で営農型太陽光を位置づける制度への転換となる。
農水省の木村崇之環境バイオマス政策課長は、これまで「最低限満たす基準」と「推進すべき取り組み」が乖離してきたとの認識を示した。その上で、新制度では市町村基本計画に位置づけられた望ましい案件を、国、都道府県、市町村が協力して推進する方向を示した。規制強化だけでなく、農業との両立が確認された案件を育てる考えが制度のもう一方の柱となる。
農水省は9月末以降に関連制度を改正し、移行期間を経て2027年4月から新制度を施行する予定を示している。
プラチナ構想ネットワークでは6月に「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装に向け、不適切案件の排除だけを目的とせず、「適正化」と「推進」を一体化した制度とするよう提言。「悪いものを止める」だけではなく、「良いものを伸ばす」政策姿勢を明確にするよう求めた。
提言は8項目。地域農業の特色を反映できる市町村主体の制度設計、対象作物を限定し過ぎない運用、農業者への利益還元、農業の電化・脱炭素化・エネルギー自給、市町村への国・都道府県による伴走支援、作物や設備形式ごとのデータベース整備、新技術の実証、十分な制度移行期間などを盛り込んだ。ペロブスカイト太陽電池、垂直型、可動式など技術革新を阻害しない仕組みも求めている。

■主語は「農業」、市町村が地域の最適解をつくる
新制度で重要になるのが、市町村の役割。
基調講演に登壇した小田原市の青木一実農林業振興担当部長は、同市が営農型太陽光を脱炭素施策と農林業施策の双方に位置づけていると説明した。市内では15カ所、計605kWの営農型太陽光が稼働し、耕作放棄地の再生や地域内への電力供給などを進めてきた。
小田原市が掲げるのは「農業ファースト」。発電事業を成立させるために形式的に農業を行うのではなく、農業を継続、発展させるために発電収入を活用する考え方を基本とする。農業の持続可能性、遊休農地の活用、生物多様性への配慮、エネルギーの地産地消なども基本計画に反映する方向を示した。国の一律基準だけではなく、作物、農地形状、農業機械の利用状況など地域ごとの実態を考慮する。
一方、市町村に裁量を持たせれば、新たな課題も生まれる。自治体ごとに担当人員、専門知識、経験には差がある。市町村に計画策定を委ねるだけでは地域間格差を生みかねず、国や都道府県に加え、企業、研究者、業界団体などが地域に応じて支援する必要性が指摘された。一律のひな型を全国に当てはめれば、地域に適した案件まで排除する可能性もある。
農業現場からは、地域合意の重みも示された。中部ソーラーシェアリングやろまい会の北井久美絵代表理事は、農業者が設備導入時に最初に確認するのは「農業に支障がないか」という点だと説明。農家の作業負担をできる限り増やさず、収入を減らさず、経済的なメリットを生む必要があるとした。
次世代への継承。現役世代では成り立っても、子や後継者に引き継いだ際に負担となれば地域には根付かない。農地を数十年単位で守る視点から、後継者にも合理性を説明できる設備、事業モデルであることが普及の条件になる。
企業側からも具体策が示された。ヤンマーホールディングスは、環境再生型農業と営農型太陽光を組み合わせるモデルを紹介した。発電設備への投資や維持管理、撤去などを事業側が担い、発電電力や環境価値から得た収益の一部を土地賃借料や営農支援金として生産者へ還元する。農作物販売に加え、長期的で安定した収益源を組み合わせる構想となる。
ベジタリアの小池聡社長はさらに踏み込み、営農型太陽光を「農地に発電設備を置く」だけの仕組みではなく、農業、エネルギー、地域政策を一体化した農業インフラとして設計する必要性を指摘した。食料生産とエネルギー生産を同じ地域基盤の上で組み合わせ、農業施設や加工場などの需要側まで含めて設計する考え方となる。

■制度を固定せず、技術革新と「次の農業」を取り込む
営農型太陽光そのものも技術的な転換期を迎えている。
千葉エコ・エネルギーの馬上丈司会長は、従来の営農型太陽光がFITを背景とした売電収入確保から始まった一方、今後は農業生産に必要なエネルギーの確保、脱化石燃料、気候変動下での日射制御などへ役割が広がると指摘した。
設備形式も水田上の藤棚型にとどまらず、一本足、垂直型、可動式など多様化している。遮光率だけで評価するのではなく、支柱構造、パネル配置、可動方式、農業機械との関係、電力の利用方法まで含めて判断する段階に入っているとの見方を示した。
斬新だったのが、東京大学名誉教授の瀬川浩司氏によるペロブスカイト太陽電池の提案。軽量で移設しやすい特性を生かし、作物を栽培していない農閑期には農地で発電し、営農期には撤去して別の場所へ移す「時間シェア」のソーラーシェアリングを提示した。従来のように農地上部の空間を恒常的に分け合うだけでなく、農業と発電で利用する「時間」を分ける発想となる。
木村課長は制度上の整理には検討が必要としながらも、ペロブスカイトや波長選択型の薄膜を農業へ活用する可能性に言及。新技術によって農業と太陽光発電の組み合わせがさらに広がる余地を示した。一方、営農型太陽光が規制の厳しくなるメガソーラーの「逃げ道」とならないことも重要な共通認識となった。
制度が技術を追いかけるだけでは社会実装は進まない。技術を無条件に認めれば不適切案件を招く一方、画一的な基準で固定すれば農業生産や気候変動への対応に有効な技術まで排除しかねない。科学的な実証データを蓄積し、地域ごとの作物や環境に合わせて制度を更新していく仕組みが問われる。
シンポジウム終盤、新制度の下で優良事例を積み重ね、制度を安定的に運用することが当面の課題になるとされた。その前提として改めて強調したのが「適切な営農の継続」。農地は作物を生産するだけではなく、水路の維持や洪水緩和など地域インフラとしての機能も持つ。発電事業者にも、こうした農業と農村の機能を理解した上で関わる責任が求められる。
馬上氏も、農業・農村はかつて食料だけでなく薪などのエネルギーを都市へ供給してきたと指摘。再生可能エネルギーの普及によって、農業が再び電気、熱、燃料を社会へ供給する役割を担う可能性を示し、営農型太陽光を「農業という事業の中の一つの選択肢」として定着させる必要性を訴えた。
営農型太陽光を巡る議論は、農地にパネルを設置できるかという段階を越えつつある。農業をどう次世代へ残すのか、農村で必要なエネルギーをどう生み出すのか、地域の利益を誰に還元するのか。そして自治体、農業者、企業が地域ごとの答えをどう組み立てるのか。制度改正は、その設計主体を地域へ移す転機となる。
プラチナ構想ネットワークが掲げた政策提言は、営農型太陽光を農業・農村・地域エネルギー政策の交差点に置くものでもある。 新制度の施行後には、望ましい案件を増やすため、関係省庁、自治体、農業者、企業、研究者らが継続して協議する枠組みも必要になる。関係者との対話を続けながら社会実装を支える仕組みを検討する考えが示された。
「発電のための農業」から「農業を支える発電」へ。営農型太陽光が地域に根付くかどうかは、設備の数ではなく、農業、エネルギー、地域経済にどれだけ価値を還元できるかにかかる。制度、技術、事業モデルを横断してその答えをつくる社会実装が、2027年度から本格化する。

〔参照〕
▷プラチナ構想ネットワーク
▷プラチナ再生可能エネルギー産業イニシアティブ
▷「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装にむけた政策提言の公表
▷プラチナシンポジウム『望ましい営農型太陽光発電と地域主導の制度設計』を開催いたしました