【研究】日本サステナブル建築協会:住宅断熱と健康の関係を検証する研究発表会を開催―「暖かい家は健康を変える」断熱と血圧等の関係示す

一般社団法人日本サステナブル建築協会(JSBC)は2月16日、国土交通省補助事業「スマートウェルネス住宅等推進事業」に基づく研究成果を共有する「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第10回報告会」をオンライン形式で開催した。住宅の断熱性能向上が居住者の健康に与える影響をテーマに、建築・医学双方の研究者や行政関係者が登壇し、最新の分析結果と今後の住宅政策への示唆について議論が行われた。
同調査は2014年度から継続する全国規模の研究で、約2000世帯・4000人を対象に住宅内温熱環境と血圧、健康状態、生活習慣などを長期的に測定・分析している。断熱改修前後の比較に加え、5年後・10年後の追跡調査まで実施されている点が特徴で、住宅性能と健康の因果関係を実証的に検証する国内最大級の研究となっている。
■断熱改修前の住宅9割が「健康温度」に届かず
報告では、冬季の室温実態に関する分析結果が示された。断熱改修前の住宅はWHOが推奨する室温18℃以上を満たさない住宅が約9割に達し、日本の住宅が依然として低温環境に置かれている実態が明らかとなった。居間平均室温は約16〜17℃、寝室では約12〜13℃にとどまり、地域差も最大6℃以上確認された。
研究では、低室温住宅ほど血圧上昇や心電図異常が多く確認される傾向が示されており、高血圧や循環器疾患は「生活環境病」として住宅性能と密接に関係する可能性が指摘された。室温が不安定な住宅では血圧の日内変動が大きく、健康リスク増大との関連も確認された。
■断熱改修で血圧低下、活動量増加の傾向
断熱改修の効果として、最高血圧が平均約3mmHg低下する結果が報告され、とくに高リスク者ほど改善効果が大きい傾向が確認された。非居室の温度改善により住宅内での移動や活動量が増えるなど、生活行動にも変化が生じる可能性が示された。
暖かい住宅では睡眠の質や身体症状の改善傾向も見られ、断熱性能の向上が単なる省エネ対策ではなく、健康寿命延伸や医療費抑制にも寄与する可能性があるとの見解が示された。

(出典:HPより)
■建築と医療の連携が政策段階へ
基調講演では、日本高血圧学会・日本循環器学会による緊急声明「冬こそ血圧朝活!」を踏まえ、起床前後の室温を18〜22℃以上に維持する重要性が解説された。住宅の温熱環境改善がヒートショック予防に直結するとの認識が共有され、住宅政策と健康政策の連携強化の必要性が強調された。
これまでの研究成果は「健康日本21(第三次)」や厚生労働省の健康情報サイトにも反映され、住宅分野が公衆衛生政策の一部として位置付けられ始めている。パネル討論では、断熱改修をエネルギー施策だけでなく予防医療インフラとして捉える視点が重要との意見が相次いだ。
同協会では、科学的エビデンスの普及を通じて健康・省エネ住宅の整備を加速させ、国民の健康確保と地域社会の持続的発展につなげたいとしている。住宅の断熱性能が「快適性」から「健康基盤」へと評価軸を変えつつあることを示す報告会となった。
〔参照〕
▷住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第10回報告会
▷講演資料
▷緊急声明「冬こそ血圧朝活! -冷えとヒートショックから命を守るために-」