【独自】ニチコン:住宅蓄電・V2Hのパイオニア、累計販売22万台超え―太陽光発電の「2019年問題」を越えGX-ZEHとEV普及で自家消費標準時代が遂に到来!?

住宅エネルギーのあり方が転換点を迎えている。太陽光で発電し、蓄電池にため、必要に応じて家庭や電気自動車(EV)で使う――。「自家消費」を前提とした住宅像が現実味を帯びる。2019年の「卒FIT」問題を乗り越え、2027年以降に本格化するGX-ZEHとEV普及は追い風となるか。住宅蓄電・V2Hの先駆者であるニチコン東京開発センター統括 NECST事業本部 副本部長 兼 エネルギーソリューショングループ 戸成 秀道 蓄電ビジネスユニット長に訊いた。
■コンデンサ大手、蓄電関連が成長ドライバーに売上高1757億円へ
1950年創業のニチコンは、電力・家電・自動車などほぼ全ての電気製品に使われる電子部品・コンデンサ大手。2025年3月期の連結売上高は1757億円。事業別では、家庭用蓄電システムやEV関連機器を含むエネルギー関連事業(NECST:Nichicon Energy Control System Technology)が765億円と全体の4割超を占めるなど近年はエネルギー分野での存在感を強める。
このうち蓄電関連売上高は356億円で前年から4%強伸長。2026年3月期には390億円まで拡大する計画で、2桁成長を見込む。EV関連機器は足元で一時的な需要調整の影響を受けているものの、中長期では回復を想定する。
家庭用蓄電システムは2012年と業界に先駆けて市場投入した。系統連系のJET認証第1号を取得するなど実績を積み上げてきた。累計生産は2014年に1万台、2019年に6万台、2023年に15万台を突破し、2025年には22万台超に達した。
「市場の草創期とも言える2009年頃。住宅太陽光発電が普及し始め、当社でもエネルギー分野への参入を検討していた。創業技術の応用から『蓄電』という領域に決まり2010年に環境・エネルギー事業としてNECST事業が立ち上がった」
「京都の老舗同士ということもあり、京セラとタッグを組み2012年に家庭用蓄電システムを発売。東日本大震災を契機に電力・エネルギーの常識が変わるとの認識から製品投入は1年前倒しだった」と振り返る。

■太陽光発電の「2019年問題」が変えた電力の価値
市場拡大の起点となったのが、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の買取期間満了、いわゆる「2019年問題」だった。2009年以前に設置された住宅用太陽光は、10年間の固定買取期間を終え、同年11月以降、順次「卒FIT」を迎えた。初年度だけで約53万件、23年まで累計で約165万件・670万kW規模に上り、現在も順次卒業が続く。
FIT期間中は1kWhあたり~40円という高水準の買取価格が保証されていたが、満了後の買取価格は相対契約で8~10円程度まで低下する。電気料金が1kWhあたり30円前後に上昇する中、売電よりも自家消費した方が経済合理性は高い。発電した電力を昼間に売り、夜間に高い電気を買う従来モデルは成立しにくくなった。

この構造変化を受け、注目を集めたのが家庭用蓄電池。昼間に太陽光で発電した電力を蓄電池にため、夜間や朝夕のピーク時に使用することで、購入電力量を抑制できる。売電単価と買電単価の差が拡大するほど、蓄電池の経済効果は高まる。
電気料金の上昇も追い風となった。燃料価格の高騰や再エネ賦課金の増加により、家庭の電気代負担は年々増加。蓄電池は「節電・節約」の手段としても位置づけられるようになった。加えて、台風や地震など自然災害の多発を背景に、停電時の非常用電源としての価値も再評価された。
2014年頃より同問題を提唱してきた戸成蓄電ビジネスユニット長は「卒FITは一過性の制度変更にとどまらず、住宅エネルギーの価値観を「売電中心」から「自家消費中心」へと転換させる決定的な契機となった」と指摘する。
結果として、家庭用蓄電池市場は右肩上がりで拡大。大容量化や太陽光・EVと連携する高機能化が進んでいる。2019年問題は、日本の住宅エネルギー市場を次の成長段階へ押し上げた分水嶺だったと言える。
国内の家庭用蓄電システム市場は、2024年度の出荷台数が約15.9万台(前年比102%)。累計出荷は約98万台と100万台規模に迫る。容量面では10kWh超が主流となっている。太陽光・蓄電池・EV等を一体制御するマルチ型(ハイブリッド・トライブリッド)が全体の8割超を占め、この中でニチコンは2割超のシェアを持つ。

■家とクルマをつなぐV2HでEVを「走る蓄電池」に
家とクルマをつなぐV2H(Vehicle to Home)分野でもニチコンは先行する。昼は太陽光でEVを充電し、夜間や停電時は住宅へ給電。EVを「走る蓄電池」として使う自家消費型の仕組みを2012年8月に世界で初めて製品化。今も国内シェア9割超とトップを走る。
「電気自動車1台の電池容量は40~60kWh規模に達し、一般的な家庭用蓄電池(10~15kWh)を大きく上回る。EV普及は一時的に減速しているが、政府は2035年に新車販売の電動車100%を掲げる。EVが普及すれば、V2Hは防災用途に加え、日常的な電力マネジメントの中核になる可能性は高い」

■2027年GX-ZEH本格化が分水嶺に
住宅分野では、2025年から省エネ基準適合が義務化され、2027年にはGX-ZEHが本格施行される見通し。2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電を設置する政府目標もあり、蓄電池は「選択肢」から「前提条件」へと変わる。
大手ハウスメーカーはGX-ZEHを標準仕様として採用する動きを見せ、ニチコンはトライブリッド蓄電システムなど関連製品の採用拡大を狙う。
自家消費が標準となる時代を見据えて先陣を切った蓄電・V2Hのパイオニア。業界と連携して形作ってきたその世界観が実現する日が近づいているのかもしれない。

〔参照〕
▷ニチコン会社沿革
▷2026年3月期 中間期 決算概要
▷2025年3月期 決算概要
▷住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?