【ゼミ】ENEX50回・再生可能エネルギー世界展示会20回記念講演会――再エネ・省エネ半世紀の到達点、GXが示す次の成長戦略

省エネルギーと再生可能エネルギーの普及を牽引してきた「ENEX」と「再生可能エネルギー世界展示会」の節目を記念する講演会が、2026年1月29日、東京ビッグサイト会議棟で開催された。ENEXは50回目、再エネ世界展示会は20回目を迎え、産官学のキーパーソンが一堂に会し、今後のエネルギー政策と技術革新の方向性を議論した。
冒頭、ENEX主催者を代表して一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)の海輪誠会長、続いて、特定非営利活動法人再生可能エネルギー協議会(JCRE)の大和田野芳郎理事長がそれぞれ挨拶し、さらなる再エネの普及加速、省エネの継続的な取り組みが日本の産業競争力やエネルギー安全保障など持続可能な未来へ繋がっていくとの見方を示した。
省エネルギーセンターは、1978年の設立以来、日本の省エネ推進を担う中核機関として活動を続けてきた。前身組織の近畿熱管理協会時代から数えると半世紀を超える歴史を持ち、政策支援、情報発信、人材育成、企業・地域支援、国際協力を柱に、産業界と行政をつなぐ役割を果たしている。
他方、再生可能エネルギー協議会は、太陽光・風力・バイオマス・水素など再生可能エネルギー全分野を横断する国内有数の連携組織。2006年の「再生可能エネルギー2006国際会議」を契機に設立され、2016年にNPO法人化。AIST、NEDO、NEFなどと連携し、国際会議や世界展示会、技術フォーラムを継続開催している。
■GXで脱炭素と産業競争力を両立
来賓挨拶では、経済産業省資源エネルギー庁の小林大和・省エネルギー・新エネルギー部長が登壇。GX(グリーントランスフォーメーション)政策の最新動向を説明した。
我が国のエネルギー自給率は2024年度16.4%(1970年度:15.3%)とOECD加盟38カ国中2番目に低く、化石依存度は68%、貿易収支における化石燃料の輸入額は約24兆円にものぼるなど、依然変わらないエネルギーを巡る現状を指摘。
「脱炭素の流れに乗りながら経済産業を強くすることがGXの本質」と強調した。エネルギー安定供給は産業の浮沈を左右するとし、原子力か再エネかの二者択一ではなく「原子力も再エネも両方進める」方針を再確認。電力需要増大と化石燃料を持たない日本の現実を踏まえ、エネルギー自立の観点から非化石電源の確保が不可欠とした。
昨年2月の基本計画は世界の脱炭素トレンドを先取りした内容で、政権交代後もGX投資は継承・強化されている。今夏までにまとめる地域未来戦略・日本成長戦略でもGX産業クラスター形成を柱に据え、47都道府県・1700自治体の提案を基に国・地方・産業界の連携で拠点づくりを進めるという。
再エネは世界で加速し、太陽光は価格低下で途上国にも広がる一方、国内ではメガソーラーの地域共生が課題と指摘。昨年12月に対策パッケージを策定し、不適切事案への規制を強化した。同時に再エネ最大限導入の方針は不変で、ペロブスカイト太陽電池や公共施設の屋根活用を重点化する。パネル大量廃棄への懸念にはリサイクル法案で対応し、「健全な市場発展のため」と位置付けた。洋上風力や水素、地熱も含め総合的に推進し、「国としてぶれずに進める」と述べた。

■DX・GX時代の電力転換、ASEAN連携が成長の要に
基調講演では、東京科学大学の柏木孝夫名誉教授が「ゼロカーボン社会への挑戦 GX・DXで切り開く未来」と題して講演。分散型エネルギーシステムとデジタル技術の融合がエネルギー転換の鍵になると指摘し、地域マイクログリッドやデータ駆動型の需要最適化の可能性を紹介した。
電力システムは今、大きな転換点にある。再生可能エネルギー比率は2040年に40~50%へ拡大し、太陽光・風力が3分の1を占める見通しだが、変動電源の増加は系統安定を難しくする。電力は「生き物」であり、需要と供給の同時同量が崩れれば電圧・周波数に影響し停電リスクが高まる。
このため蓄電池併設や需給調整市場、VPP(仮想発電所)による制御が不可欠で、2026年4月からは低圧分野まで調整市場が拡大する。分散型電源と熱電併給を需要地に配置し、送電負荷を抑えることが国民負担の軽減にもつながる。
こうした国内のDX・GXは、国際戦略と一体で進める必要がある。外務・経産・環境の各省が連携し、日本がASEAN諸国向けのエネルギープラットフォームを構築すべき。各国の強みを取り込み、再エネが豊富な地域からはグリーン水素や燃料を調達し、日本は運用技術や市場設計で貢献する相互補完モデルを描く。
SDGsは環境を基盤に社会とビジネスが成り立つ三層構造で、核心は気候変動対策とクリーンエネルギーである。米国の枠組み離脱など不確実性はあるが、長期的な国際協調は不可欠で日本の成長戦略の要となるのではないか、と論じた。

■脱炭素は化石燃料文明からの卒業
続く講演で、東京大学の江守正多教授(未来ビジョン研究センター)は「気候の危機にどう向き合うか」をテーマに、最新の気候科学の知見を解説。温暖化影響の深刻化を踏まえ、緩和策と適応策を同時に進める社会的合意形成の必要性を訴えた。
世界では再生可能エネルギーが急速に拡大している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータによれば、過去20年で新設電源の主役は火力・原子力から再エネへと転換し、特に2023~24年は伸びが顕著で、2024年の新設設備容量の9割以上が再エネとなった。発電電力量ではまだ差は小さいものの、潮流は明確である。
その中心は中国で、国内導入の急増に加え、過剰生産した太陽光や蓄電池を世界に安価供給し、アフリカや東南アジアの普及を後押ししている。一方で、世界の電源が中国依存に傾くリスクも無視できない。
米国では第2次トランプ政権が気候政策を大きく後退させ、パリ協定離脱、研究機関の弱体化、化石燃料促進などが進む。背景には長年の否定論・ロビー活動の影響があり、国際協調の停滞が懸念される。ただし州・都市・企業レベルでは対策が続き、再エネの経済性が普及を下支えしている。今後、欧州の政治動向や米国の次期選挙が分岐点となる。
IPCCは「将来は現在の選択と行動で決まる」と強調する。理想的には1.5℃で温暖化を止める道筋があるが、現実はそのペースに乗れていない。途中で改善しても、最善の未来には戻れない。今の世代の責任は極めて重い。
気候対策は「やらなければ大きな損失」だが、早く実施すれば健康改善・大気汚染減・エネルギー安全保障・貿易収支改善など多くのコベネフィットが得られる。必要資金もGDPの一部で賄え、技術の大半は既に存在する。問題は速度であり、現状の投資は必要の3~6倍不足している。
転換を阻む最大要因は社会的調整である。脱炭素の「敗者」を生まない配慮、合意形成、制度・産業構造の転換には時間がかかる。ここを加速しなければ目標は達成できない。
江守氏は「脱炭素は卒業(卒炭素)」と表現する。かつて化石燃料は枯渇が問題だったが、今は余っていても使わない選択を目指す段階に入った。石器時代が石不足で終わったのではなく、より良い技術が生まれたから終わったのと同じで、再エネ・蓄電池という“より良いシステム”が主流になれば、我慢ではなく自然に化石燃料は不要になる。
世界はその方向に向かっているが、スピードが足りない。気候変動の現実を直視し、この「卒業」を社会全体で加速することが求められると話していた。
再エネ・省エネの源流はオイルショックに遡る。半世紀を経て尚、同様の議論が繰り返されている。節目となった今、改めて何を見据えるべきなのか。会場には自治体、企業、研究機関の関係者が多数参加し、講演後も活発な意見交換が行われた。節目を迎えた両展示会は、GX時代のエネルギー転換を先導する場として、さらなる役割拡大が期待される。
〔参照〕
▷一般財団法人省エネルギーセンター
▷特定非営利活動法人再生可能エネルギー協議会
▷ENEX50回、再生可能エネルギー世界展示会20回記念講演会
▷Intergovernmental Panel on Climate Change, 2023