【祝典】日本太陽エネルギー学会:設立50周年で産官学民の連携深化を宣言―太陽エネルギーの知軸、次の50年へ

太陽エネルギーの可能性。アカデミアの形成を担ってきた日本太陽エネルギー学会(JSES)が、設立50周年を迎えた。再生可能エネルギーの黎明期から研究と普及をけん引してきた学会は、節目の年に「横櫛」と呼ぶ産官学民の横断的な連携強化を打ち出し、脱炭素社会の実現に向けた次の半世紀の指針を示した。
研究の礎から社会実装へ
記念事業は11月2日、東京・明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーで開催された。1975年(昭和50年)の発足以来、太陽光や太陽熱をはじめとする自然エネルギー利用技術の振興を目的に活動を続けてきたJSESは、いまや流体・バイオマス・建築などを含む幅広い分野を対象に、研究者・企業・行政・市民を結ぶ学術団体に成長。この記念スべき日には、日本エネルギー学会の佐藤康司会長、日本風力エネルギー学会の永尾徹会長、韓国太陽エネルギー学会の金義慶会長(ビデオメッセージ)らが祝辞を寄せた。
講演のトップバッターは若尾真治会長。「日本太陽エネルギー学会のこれまでとこれから」と題し、学会の半世紀の歩みを振り返り、今後は研究成果を社会へ還元すると共に企業や地域との共創を深化させる姿勢を示した。続いて、作文・絵画コンテストの受賞者が発表され、子どもたちの創造的な視点から見た再エネ社会の未来像が紹介された。
気候危機に立ち向かう「行動の科学」
特別講演では、気候変動研究の第一人者である東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授が登壇。「気候の危機にどう向き合うか」と題し、IPCC第5・6次報告書の知見をもとに、現状の政策・投資スピードでは気候安定化が間に合わないと警鐘を鳴らした。「気候変動対策は“やらなければ悲劇”というだけでなく、“早くやるほど得”な分野」と指摘。再エネ拡大に必要な資金も技術もすでに人類は手にしていることから、問題は社会システムの変革の遅れにあると強調した。「脱炭素の進展に伴う敗者を生まないよう、包摂的な構造転換を」と訴え、聴衆に深い印象を残した。
続いて、東京大学大学院の福永真弓教授が「環境倫理学入門」と題して講演。再エネ技術の導入が地域の景観や土地利用、文化的アイデンティティを変える影響に言及し「科学技術は自然と人との関係を再設計する営み。建設から廃棄に至るまで多様な主体と応答し続ける倫理的責任がある」と語った。

式典後の祝賀会には、英弘精機、関電工、OMソーラー、千葉エコ・エネルギー、東京ガスグループ、日本設計、エヌ・ピー・シー、前事務局長の川越繁一氏など多数の関係者から祝辞・祝電が寄せられた。OB座談会では足利大学 牛山泉 名誉教授(第17期会長)、同志社大学 石原好之 名誉教授(第18期会長)、工学院大学 宇田川光弘 名誉教授(第19期・法人1期会長)、太陽光発電技術研究組合 太和田義久 専務理事(法人3,4期会長)、東京都立大学 須永修通 名誉教授(法人5期会長)、東京農工大学 秋澤淳 教授(法人7期会長)らが登壇し、後進へエールを送った。
地域×住宅×再エネ、次の連携軸を探る
翌3日は地域脱炭素部会・100%再生可能エネルギー部会による合同シンポジウムが開催された。テーマの中心は地域脱炭素から住宅太陽光発電・蓄電・高効率給湯器・EV&V2H・HEMSなど多岐にわたった。藤野純一氏(地球環境戦略研究機関)、岩船由美子氏(東京大学生産技術研究所)、辻基樹氏(再エネ企画)らが基調講演を行い、業界の垣根を超えた協調の必要性を説いた。
現場を担ってきた辻氏によると「提案・操作・技術の三つの壁を越えるには、メーカー間のUI統一や施工・通信の一体化、顧客目線の導入計画が不可欠」と指摘。モデレーターを務めた堀尾正靫氏(東京農工大学名誉教授)は「分散エネルギー社会の基盤を支えるのは異業種連携」と総括した。パネルディスカッションでは三菱自動車、日産自動車、ニチコン、パナソニック、ミサワホーム、積水ハウス、ヤマダ住建、REXEVなども参加し、産学協働の具体像を議論した。

原点と未来を結ぶ「サンシャインの系譜」
50周年関連事業として、太陽光発電部会では福島県磐梯熱海温泉で「JSES-PVRessQ!夏合宿2025」を開催したほか、ソーラー建築部会は「ソーラーアーキテクチャーガイドブック」を発刊。学会誌「太陽エネルギー」では、国家プロジェクト「サンシャイン計画」に携わった研究者が思いを綴る連載「それぞれのサンシャイン物語」を展開。桑野幸徳氏、加藤和彦氏、牛山泉氏、村岡洋文氏らがリレー形式で筆を取り、再エネ開発の源流を次世代へ語り継ぐ。
JSESは、太陽熱・太陽光だけでなく、風力、水力、バイオマス、建築、電気化学など多分野にまたがる学術活動を展開。制度設計や社会受容性を含めた“エネルギー文化”の研究に力を注ぐ。設立当初の目的は「科学技術の振興と成果の普及」だが、その実現手段は時代とともに変化してきた。50年前に石油危機を契機として発足した学会は、気候危機の時代に再び存在意義が増す。太陽が照らす未来社会を、どうデザインするか。JSESの挑戦は、次の半世紀に向けて新たなフェーズへと踏み出した。
〔参照〕
▷日本太陽エネルギー学会
▷設立50周年記念事業
▷2025年度(令和7年度) 研究発表会