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【読解】第7️次エネルギー基本計画:2040年度の電源構成、再エネ4~5割のうち太陽光発電は23~29%

2025.01.22

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脱炭素社会実現に向けた大枠が示された。政府は24年12月27日、『第7️次エネルギー基本計画』の原案を公表。実に4年ぶりの改訂となる。2040年度におけるエネルギーミックスのシナリオとは。

エネルギー基本計画は日本のエネルギー政策の方向性や課題、目標を示す基本的な指針となる政府の計画。概ね3~5年ごとに見直される。安全性(Safety)を大前提とし、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現する考え方『S+3E(エスプラススリーイー)』を原則とする。

この概念は2022年12月に岸田前総理を議長とする「GX実行会議」にて策定された「GX実現に向けた基本方針」にも踏襲され、第7次エネ基と共に示された『GX2040ビジョン』『地球温暖化対策計画』と一体運用される。エネ基が全体像、GXと温対計画が具体案といった位置づけになる。

GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」では再エネだけでなく重点16分野において投資戦略が定められ「今後10年間で20兆円規模の先行投資支援策により150兆円規模の官民投資を呼び込む」ためのロードマップ等が示されている。

・重点16分野:鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、自動車、蓄電池、航空機、SAF、船舶、くらし、資源循環、半導体、水素等、次世代再エネ(ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力、次世代型地熱)、原子力、CCS

地球温暖化対策計画では「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦」という目標から、世界全体での1.5℃目標及び2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路と整合的で野心的な目標として「2035年度、2040年度に、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す」とし、国・地方自治体・民間企業における温室効果ガス排出削減対策の基本方針や分野横断的な施策が列記されている。それぞれの決定事項はテーマが異なっているが流れる道筋は一貫している。

エネ基改訂にあたり2040年度における需給見通しとエネルギーミックスの検討に向け6つの専門機関に分析を依頼。基本原則に加えコスト最適化、最大限の経済成長、海外との相対性を踏まえた評価を織り込んだ地球環境産業技術研究機構(RITE)による分析が主軸となった。

社会経済活動量と排出削減対策前の想定として人口・世帯数・主要産業の生産量、交通・輸送などを定義。再エネ・水素・CCSに加え産業・家庭・運輸など各分野での技術革新や導入推移が見積もられた。分析の結果は下記の通り。

・エネルギー需給:2040年度の最終エネルギー消費量は2.6~2.7億kL程度、一次エネルギー供給量は4.2~4.4億kL程度
・電力需給:2040年度の電力需要は0.9~1.1兆kWh程度、発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度
・エネルギー起源CO2排出量は3.7億トン程度(2013年度比▲70%程度)
※2050年ネットゼロに向けた直線的な排出削減を実現するシナリオ

各種メディアなどで議論されている再エネの電源構成については4~5割で、再エネの筆頭格である太陽光発電に関しては大半を占める23~29%とした。ただし、2040年度エネルギー需給見通と電源構成イメージは「前提により変わり得るもの」「導入の上限やキャップを示すものではなく、技術革新等により、示した水準を超えて導入が進む」と、あくまで「我が国のエネルギー政策として目指すべき方向性を示した」と注記されている。2040年まで残り15年。果たして計画通り進むのか。上振れるのか。注目が集まる。

〔参考〕
第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見の募集について
第7次エネルギー基本計画(案)
2040年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)
知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?
知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?
これまでのエネルギー基本計画について
GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」を改定
地球温暖化対策計画(案)