特集Original Content

【ゼミ】環境行動デザインハブ:BECC JAPANから新法人へ、行動科学で環境行動を社会実装

2026.01.26

X line


気候変動や生物多様性の損失、資源制約など、環境問題は複雑さを増している。技術や制度の整備が進む一方で、「重要性は理解していても行動に移しにくい」という課題は依然として残る。その背景には、人の心理や社会構造といった“行動の壁”が存在する。

こうした課題に正面から向き合ってきたのが、2014年に始動した「気候変動・省エネルギー行動会議(BECC JAPAN)」である。米国で2007年から続く国際会議BECCの理念を受け継ぎ、日本版BECCとして設立。行動科学の知見を環境・エネルギー分野に応用し、人はなぜ行動を変えにくいのか、どうすれば行動変容を促せるのかを共有・議論する場として発展してきた。

年次コンファレンスは2025年までに累計13回開催され、延べ参加者数は約2800人、発表件数は470件にのぼる。研究者、企業、自治体、官公庁、NPO、学生など多様な立場の参加者が集い、国内有数の行動科学×環境分野のプラットフォームを形成した。2020年以降はオンラインやハイブリッド開催も導入され、地域や所属を越えた知見交流の基盤が築かれている。

一方、2050年カーボンニュートラルという明確な社会目標が掲げられる中、知見の共有にとどまらず、実際の政策、事業、地域活動へと行動変容を組み込んでいく段階へ進む必要性が高まっていた。こうした認識を背景に、より公益性と持続性の高い運営体制への移行が検討され、BECC JAPAN事務局の活動を発展的に継承する形で、2025年11月、非営利型一般社団法人「環境行動デザインハブ」が誕生。同年12月20日には、BECC JAPANおよび関連活動の運営が、気候変動・省エネルギー行動会議から新法人へ正式に移管された。

■環境行動を「当たり前」にするためのハブ機能

環境行動デザインハブが掲げる使命は、「行動のデザインで、人と環境の調和を築く」ことにある。環境に配慮した行動を努力や善意に委ねるのではなく、社会の中で自然に選ばれる仕組みとして定着させることを目指す。

同法人は、知恵をつなぐ、関係をつなぐ、実践につなぐという三つの機能を軸に活動を展開する。ウェブサイトやオンラインコミュニティ、イベントを通じて行動科学と環境分野の知見を蓄積・発信するとともに、研究者、企業、行政、NPOなど多様な主体が協働するネットワークづくりを進める。地域や組織の現場に寄り添いながら、研修、伴走支援、マッチング、助言などを通じて行動変容の設計と実践を支援していく方針。

移管に先駆けて2025年9月より、BECC JAPANで培われた人的ネットワークを基盤に「環境行動デザインコミュニティ」を立ち上げ、継続的な情報共有や交流を開始していた。今後の活動領域は、省エネルギー分野に加え、気候変動、生物多様性、資源循環などへと拡張する考え。

新たな取り組みの方向性を共有する場として、2026年1月26日、オンラインによる設立記念イベントが開催された。イベントでは、法人設立の背景や今後の活動方針が紹介されたほか、行政、研究、企業、NPOなど異なる立場の参加者によるクロストークや意見交換が行われ、行動科学と環境分野の連携に対する期待が示された。

環境行動デザインハブは、自らが答えを提示する組織ではなく、多様な知見と実践を結び付ける「ハブ」として機能することを志向する。小さな行動の積み重ねを社会の当たり前へと育てていく。その実装を支える拠点として、同法人の今後の展開が注目される。

〔参照〕
一般社団法人環境行動デザインハブ設立ならびに運営体制移管のお知らせ
一般社団法人環境行動デザインハブ