【ゼミ】日本優良ビルダー普及協会(JGBA):工務店・ビルダーの“企業価値最大化”を議論――多角化・海外・M&Aを軸に成長戦略セミナー開催

工務店・ビルダーを本業としながら、成長市場へどう進出すべきかを議論するセミナー「2026年は企業価値最大化経営」が1月29日、東京・赤坂でリアルとオンラインの同時開催で開かれ140名を越える聴衆が集まった。主催は(一社)日本優良ビルダー普及協会(JGBA)。住宅市場が縮小局面に入る中、木造の再定義、非住宅・土木参入、海外展開、M&Aなどをテーマに、全国の実践企業が具体策を示した。以下、基調講演から第三部までにアツく議論されたフォーラムの内容を詳報する。
■〔基調講演〕企業価値最大化へ「生産性1人1億円」――地域格差を直視し、応援される成長ストーリーを
トップバッターとなる基調講演には「企業価値最大化経営」をテーマにギバーテイクオール代表取締役CEOの河野清博氏が登壇。注文住宅市場が縮小局面に入り、利益確保が難しくなるなか「地域特性と業態差を踏まえた戦略設計がこれまで以上に重要になる」と指摘。企業価値は単なる利益の積み上げではなく「利益×将来期待」で決まるとし、足元の生産性向上と同時に、未来を描くミッション・ビジョン・ストーリー(MVS)を備えることが不可欠だと訴えた。
かつては成功事例の横展開、いわば“コピペ施策”が通用した。一方、近年は人口動態や産業構造、所得環境の差が拡大し、同じ打ち手でも地域によって成果が大きくぶれる。円安の影響で輸出産業の強い地域は住宅需要の質が変わり、都市圏では多角化の設計が異なる――こうした外部環境の違いを前提に戦略を組み替える必要があるとした。
業態面では、注文住宅が完全競争に近づき「真面目にやっても損益トントン」になりやすい構造にあると分析。性能・デザイン・営業教育といった従来モデルだけでは限界が見え始め、ポートフォリオ転換が欠かせないと強調。その上で、①地域・業態格差を直視、②1人当たり売上1億円の生産性、③MVSで人と資金を呼び込む――の3点を経営アップデートの軸に掲げた。

■〔第一部〕注文住宅からの脱却と工場化革命
ライフデザイン・カバヤ、2030年に売上1000億円視野
続いて登壇したのはライフデザイン・カバヤ(岡山)の窪田健太郎社長。注文住宅依存からの脱却と多角化戦略を詳説した。売上高は今期500億円規模に達する見通しで、従来2035年としていた1000億円目標を2030年ごろへ前倒しする意欲を示した。
差別化の核心に据えるのは研究開発。社内に研究部門を置き、独自の木造ハイブリッド工法を高度化。地震の連続性を前提に「自宅を避難所にする」発想で強靱化を進める。
非住宅は急拡大し足元140億円、来期200億円規模へ。木造ゼネコンを掲げ、鉄骨・RCも取り込みながら環境性能の高い街づくりを志向する。ベトナムでは制度整備に関与し、木材サプライチェーン整備など長期投資も進める。食品や植林まで含め、地域貢献と成長の両立を企業価値の柱に据えた。
百年住宅、工場化で“大工工事ほぼゼロ”へ
百年住宅(静岡)の中島雄社長は、コンクリート住宅の生産革新を披露した。外装・断熱・階段まで工場で一体化し、現場8工程を削減。躯体7日完成、断熱等級6相当を標準化する新工法を特許出願中だ。ベトナムで着想したパネル構成を採用し、輻射式冷暖房と組み合わせて快適性を高める。3Dプリンター住宅とも連携し、工場を“家づくり拠点”へ進化させ人手不足に挑む。
多角化は社長の“紙飛行機”
第一部のセッションでは多角化と差別化が議論された。窪田氏は「経営者が全力で投げる紙飛行機」と例え、非住宅は2人から140億円へ成長したと紹介。生産性→待遇→人材の循環が採用力を高めるとし、土木や海外も“応援される物語”になると語った。
中島氏は、小さく試し改善を重ねる商品開発の現実を示し、技術の掛け合わせによる“語れる強み”の重要性を強調。首都圏では低層小規模の隙間を工場生産で攻略する戦略を示した。
締めくくりで窪田氏は「工夫と勇気で成長は可能。社員が人生を楽しめる会社へ」と訴え、中島氏は「コモディティからの脱却」を力説。多角化の覚悟、生産性の循環、負けない一点――の3点を共有し第1部を終えた。

■〔第二部〕AI×育成×連合経営で現場を守る
匠工房、職人不足に自前育成とAIで挑む
第二部では近畿・北陸圏の有力ビルダーが登壇。滋賀県を拠点にリフォーム・新築を展開する匠工房の関孝治会長は「地域に必要とされる企業への転換」を経営の柱に据え、職人育成とデジタル活用を同時に進めていると語る。グループ売上高は前期56億円、社員約140人。新築は年50棟体制を目指す一方、リフォームを主力に不動産仲介やテナント開発も手掛ける。ただ、契約済み工事が24億円分滞留しており、要因は深刻な大工・職人不足。関西では若手でも50代が中心で、「10~20年後には現場が回らなくなる」と危機感を示す。
対策の軸は人材の自前育成とする。中高卒や施設出身者を対象にした大工養成「マイスター高校」を創設し、資格と実習を組み合わせた雇用型教育を開始。就労支援B型事業所も設け、ロケット部品づくりなど将来性のある仕事を後押しする。生産性向上ではAIを積極導入。不動産契約書や重説の自動生成を内製化し、作業を数時間から30分へ短縮した。建築向けソフトも自社開発し採用難を補う。M&Aも視野に「建築一本では生き残れない。地域と一体で成長する」と述べた。
オリバー、連合経営で非連続成長
富山のオリバー小川博司社長は「オーガニック成長だけでは限界」とし、連合経営による拡大を打ち出す。2024年12月期売上76億円、事業所21店舗・185名。リフォームが6~7割を占め、新築、不動産再販、飲食も展開する。
年率115%成長を続けてきたが採用難が壁となり、「1人当たり6000万円×人数」の単純拡大は描きにくいと分析。地域深耕を重視し、総合ブランドに加え外装・水回り特化など複数ブランドで入口を分け、大手競合に備える。
今後の柱は「オリバー連合経営」。10年で30社のM&Aを目標に、買収ではなく“連合”として統合し、採用・財務・マーケなどを共有。加盟企業は営業・施工に集中できる体制をつくる。後継者不安が強い中、「看板は残したまま一緒に戦う形が重要」とした成長の壁を連合で突破するモデルを描く。
丸尾建築、総合力で30億円超へ
兵庫の丸尾建築の丸尾幸司社長は、「デザイン・性能・健康・耐久を諦めない総合力」を掲げる。承継時10億円だった売上は2025年4月期に30億円超へ。西宮北口に新拠点を開設し南部需要を取り込む。
強みは現場品質。優良認定を取得し、初回接客はA4・20枚のスクリプトと動画で標準化、社長試験に合格しなければ接客できない仕組みで歩留まりを高める。多角化では施工後にVOC除去証明書を発行する独自サービスを展開。ニコアンドユニットハウスで新客層を開拓し、西宮では8000万円級モデルも計画する。
人材確保と承継の難度が高まる中、3社はそれぞれの道で地域密着の成長モデルを提示し、第二部を締めくくった。

■〔第三部〕賃貸で安定、分散で成長、生産性で伸ばす
アイワホーム、吹田密着で「安定経営」を再設計
第三部では近畿・関東圏の有力ビルダーが登壇。大阪・吹田市を拠点とするアイワホームの竹中徹郎社長は、超地域密着と賃貸を軸にした独自モデルを語った。本社・工場・現場を10分圏に集約し、年間約100棟を供給。人口増が続く中核市の立地を生かし、住宅と賃貸を組み合わせた安定性を最重要テーマに据える。
法人で37物件・約1500室を保有し、月1.2億円規模の賃料収入が戸建ての景気変動を補完する。大学が多く需要が厚い地域特性も追い風で、「毎月確実に入る収益が会社を長く良くする」と強調した。生産性では自社プレカット部門が上棟やポスティングも担う多能工化を推進。「地域に必要な機能を誘致し土地の価値を高めるのが地元企業の役割」と述べた。
ネクストワン、15億円ユニットで100億円へ
千葉のネクストワンインターナショナルは、エリア別ブランドによる分散型経営を展開。社員約50人で年間200棟弱を供給し、建売60棟・注文100棟が柱だ。社名より地域ブランドを前面に出し「地元の会社」と認識される戦略を取る。
事業は1ユニット15億円規模に細分化。建売中心、注文主体、移住・二拠点需要向け不動産を展開。コロナ後は東京・神奈川からの移住が増え、週末居住や民泊を想定した住宅が伸びているという。注文はローコストから高性能路線へ転換。房総では坂上忍氏と連携した愛犬家向け「リゾートドッグビレッジ」が話題を呼ぶ。遠藤一平社長は「5人の事業部長に任せ3年後に100億円超」と語り、都市型・郊外型・リゾート型のポートフォリオで持続成長を狙う。
マルコーホーム、「2時間接客」で高生産
和歌山発のマルコーホームは、関空2時間圏を商圏に展示場集中出店で成長。1拠点年100棟という実績を持つ。
柱は生産性改革だ。竹田憲秀社長が数十年かけて編み出したという。例えば来場者を2時間着座させる導線設計を徹底し、ゴルフシミュレーターや制震体験など“ワクワク投資”で差別化。女性が靴を脱がず相談できる土間リビングなど細部まで磨く。
組織面ではBPO活用を拡大し「小歯車で大歯車を回す」発想を提唱。業者教育を社長の最重要業務に据える。売上至上主義から距離を置き、利益から逆算する経営も主張していた。
締めくくりで3氏は、熱量と設計力の重要性を共有。規模拡大より“勝てる構造”を先に作る姿勢が際立ち、第三部を終えた。

■出会いと情報の力で業界を盛り上げる
住宅事業者の学びの場を運営するJGBAの田島亮代表理事は閉会挨拶で「出会いが人生を変える」と語り、団体創設の原点と今後の情報発信への決意を示した。会場とオンラインの参加者、準備に携わった役員への謝意を述べたうえで、自身が10年前にネクストワンインターナショナルに入社し人事・総務を担当した経験を振り返った。
転機は9年前のベトナム視察だったという。登壇した経営者らと現地で出会い、その縁がJGBA発足につながった。「出会いとは情報。人の行動や言葉に触れ、会社をこう変えようと思えることが価値だ」と強調した。
同団体の強みとして、月3~4回の勉強会や年6回の視察会など継続的な学習機会を挙げ、「これほどの頻度で学びを提供する団体は他にない」と自信を示す。住宅業界が厳しい環境にある中、「情報が多いほど取捨選択しやすくなる。判断材料を増やすことが経営の武器になる」と訴え、今年も発信を強化する方針を表明しフォーラムは閉会となった。

■地域工務店支援のJGBA、会員400社突破
地域工務店の経営支援プラットフォームとして存在感を一段と強める。日本優良ビルダー普及協会(JGBA)は2021年1月の設立以来、住宅会社やリフォーム会社、不動産会社を中心に会員基盤を拡大し、2026年現在、会員数は400社を超えた。地域密着の住宅事業者が抱える課題を共有し、実践的なノウハウを横断的に提供する点が評価されている。
活動の中核は情報共有と人的交流。会員専用の動画サイト「JGBA Channel」では、集客戦略、営業手法、組織づくり、DX対応などの講座を配信。オンライン・リアルのセミナーは原則無料で開催し、先進工務店への視察会やテーマ別勉強会も年間を通じて実施する。成功事例だけでなく失敗事例の共有を重視し、中小事業者が単独では得にくい実務知を補完している。
住宅市場は人口減少や資材価格の高止まり、デジタル化への対応など構造的課題が山積する。人材不足や集客コストの上昇に直面する工務店は多く、同協会は会員間の連携による課題解決を後押しする。保険や各種サービスの共同利用を通じたコスト削減策も提供し、経営の下支え役を担う。
「本当に良い家を建てているのは地域の工務店」という理念のもと、JGBAは紹介を中心にネットワークを拡大してきた。会員の多くは実需に根差した中堅・中小企業で、実践志向の運営が特徴だ。業界の変化が加速するなか、地域ビルダーの競争力を高めるインフラとして、その役割は今後さらに重みを増しそうだ。
〔参照〕
▷一般社団法人 日本優良ビルダー普及協会
▷ギバーテイクオール
▷ライフデザイン・カバヤ
▷百年住宅
▷匠工房
▷オリバー
▷丸尾建築
▷アイワホーム
▷ネクストワンインターナショナル
▷マルコーホーム