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【ゼミ】X-HEMISTRY:スマートホーム最前線――CES2026報告会、参加100名超。生成AIと標準化が“家の知能化”を後押し

2026.02.05

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米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」。そのスマートホーム分野の動向を読み解く報告会が1月30日、東京・GINZA SIXで開かれた。主催はスマートホーム領域に特化した事業開発支援を手掛けるX-HEMISTRY。住宅、通信、家電、ITなど幅広い業界から100名を超える参加者が集まり、生成AIと国際標準規格がもたらす市場転換について活発な議論が交わされた。

登壇したのは、チャンネル登録者40万人超のYouTuber「マメ」氏、100台以上のスマートデバイスを自宅に導入する織田未来氏、そしてConnectivity Standards Alliance(CSA)日本支部代表を兼ねる新貝文将CEOの3名。生活者視点・実装現場・標準規格という異なる立場から、CESで示された潮流を立体的に解説した。

■生活者が見たCES――「家が家族になる」未来像

最初に登壇した織田氏は、スマートホームを「仕事ではなく、生活の工夫」と表現する。自宅にはスマートロックや防犯カメラ、各部屋のスマートスピーカー、各種センサーなどを導入し、接続デバイスは100台超。CESには2024年から3年連続で参加。渡航費も含め基本的に自費だという。「生活者としてやったらどうなるかを確かめたい」と語る姿勢が印象的だった。

もっとも、デバイスが増えるほどアプリも増え、操作は複雑になる。織田氏はスマートホームの成熟度を段階で整理した。メーカーごとのアプリで個別操作する段階を「レベル1」、スマートスピーカーなどのプラットフォームに集約する段階を「レベル2」と定義する。ただしレベル2でもプラットフォーム間の壁は残り、「理想は“家”や“部屋”という面単位で解釈できる状態」と強調した。デバイス単体ではなく、空間の状態を家自身が理解し、家族の一員のように振る舞う世界――。その実現にはデータや規格の標準化、生成AIの進展が両輪になるとの見立てを示した。

CES会場で掲げられたメガトレンドは三つ。①DXから“知能化”への移行(インテリジェント・トランスフォーメーション)、②健康寿命の最大化(ロンジェビティ)、③社会基盤の再構築(エンジニアリング)。織田氏がまず紹介したのはロンジェビティ領域で、「日々に溶け込む“見えない診断”」として、鏡の前に立つだけで血流から心血管リスクを推定するデバイス、体重計で心電図を測る機器、トイレで栄養状態や疾患兆候を読む仕組みなどを挙げた。生活動線そのものが健康診断の入り口になる発想だ。

身体だけでなく心の変化を捉える展示も多かったという。声のトーンや行動ログからストレスや認知機能の変化を検知するデバイス、会話を解析して関係性を可視化する小型マイクなどが紹介された。診断→提案→住環境制御を一気通貫で回す循環。冷蔵庫がデータを踏まえて献立を提案し、照明や起床時間を自動調整する――そんな世界観が現実味を帯びてきた。

家事負担軽減ではロボット掃除機や家事支援ロボが脚光を浴び実用化に向けた課題も議論された。モビリティ関連として自動運転タクシー体験談、米ホームセンター視察では低価格PB製品がズラリと並ぶ光景を伝えた。

続くマメ氏は、スマートホーム系YouTuberの第一人者。発信だけでなくスマートホーム導入支援サービス「mametto」を立ち上げ、地場の工務店と連携する。「家づくり段階で相談できるプロが日本には少ない」と課題を語る。一方で「今年から一気に来る匂いがする」と市場拡大を予測。視聴者の反応が最も大きいテーマとしてスマートロックを挙げ、議論の入口となった。

■スマートロックの「電池切れ」どうする問題

後半は新貝CEOのレポートを軸に深掘り。先の議論と関連してCSAが進めるスマートロックの標準規格「Aliro」を紹介した。

Aliroは、スマートフォンやウェアラブルを共通の「デジタル鍵」として利用できるようにする業界標準プロトコルだ。メーカーごとに異なっていたスマートロックや入退室システムの認証方式を統一し、端末とリーダー間の安全で一貫した通信を実現する。

商業施設や住宅など多様な環境に対応し、導入・運用の簡素化やトラブル対応の効率化に寄与。主要OEMが連携して策定され、相互運用性と高いセキュリティを両立する次世代のモバイルアクセス基盤として期待されている。

議論が白熱したのは電源問題だった。スマートロック最大の悩みは意外にも“電源”。解錠のたびに通信や認証を行うため電池消費が大きく、数カ月ごとの交換・充電が現実的な運用負担になる。織田氏自身、滞在中に自宅のスマートロックが電池切れを起こし家族が締め出された経験を披露していた。

この点、CESでは対策がいくつか示されていたという。室内の弱い光でも発電できるペロブスカイト太陽電池を組み込む方式、赤外線で一点給電する無線給電、消費電力を抑えるUWB解錠などが紹介された。

このほか掃除機から総合家電へ拡大した中国メーカーDreameの台頭。スマホのデータをLLM解析し、認知リスクを推定してテレビで脳トレを提示する事例。Wi-Fiなど電波の乱れで状況を推定する「アンビエントセンシング」の潮流、テレビが再び家庭のハブへ浮上しているとの考察が続いた。

■コミュニティで実装を加速

締めくくりにX-HEMISTRYは、4月開始の会員制「スマートホームラウンジ」を発表。世界の技術トレンドやMatter・Aliroなど標準規格の解説、専門家への個別相談、異業種交流を提供し、企業が抱える情報不足や知見の属人化を解消する。

CES・IFAなど海外展示会の一次情報を基にしたコンテンツやレポートを配信し、国内外の“情報格差”を埋める情報基盤を構築。ナレッジ・ビジネス・パートナーの3プランを用意し、事業判断を支援するコミュニティとして展開していく。

生成AI・標準化・センシングが交差し、スマートホームは“機器連携”から“家の知能化”へ――。CES2026報告会はその転換点を映し出した一日だった。

〔参照〕
プレイド
マメ(YouTube)
mametto
X-hemistry
スマートホーム事業の情報格差を解消 最新トレンドとコミュニティを提供する会員制クラブ 「SMART HOME LOUNGE」を提供開始
Aliro