【市況】ゼロエネ建築市場2025〔ZEH-M編〕経済産業省&環境共創イニシアチブ(SII):集合住宅のZEH化率、遂に「過半数」目標に到達

環境共創イニシアチブ(SII)は、経済産業省および環境省と連携して進めてきた戸建ZEH補助事業、集合住宅向けZEH-M補助事業の実績と課題を整理し「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 調査発表会2025」として結果を公表した。本稿では戸建ZEH編に続き、集合住宅のZEH普及状況に焦点をあてる。
■ZEH-M普及率6割間近、供給体制は全国に拡大
2024年度のデベロッパー実績報告によると、ZEH-Mシリーズの建築実績は1万7,842棟・27万1,153戸となった。ZEH-M以外を含めた集合住宅全体では2万4,028棟・38万972戸。国土交通省が公表した新設集合住宅戸数(長屋+共同住宅≒約46万戸)を基に算出すると、集合住宅のZEH化率は約58%となる。同分野では、政府が掲げてきた導入目標の過半数に到達したとみられる。

地域別では、関東エリアが7,548棟と全体の約4割を占めた。全ZEH-M棟数のうち、太陽光発電設備を導入した棟数は9,441棟にのぼり、関東全域で導入率が上昇した。中でも茨城、栃木、群馬の3県では前年からの伸びが顕著だった。
低層集合住宅では「全住戸に電力を供給する」方式が約95%を占め、そのうち約85%が住戸ごとに受電する個別受電型だった。屋根面積に制約のある高層住宅でも、約25%が太陽光発電設備を搭載し、設計や設備構成の工夫によって導入余地が広がりつつある。

ZEHデベロッパーの登録数は2025年11月時点で267社。マンションデベロッパー登録(D登録)が130社、建設請負会社登録(C登録)が89社で、両登録を行う事業者も一定数存在する。大手デベロッパーの参入に加え、C登録による対応エリアの拡大により、ZEH-Mの供給体制は全国規模で広がりつつある。一方、建築実績が1~10棟にとどまる事業者が半数以上を占め、小規模事業者が普及を下支えしている実態も明らかになった。

■居住者満足と事業性が両立、EV対応も評価
入居者アンケート(低・中層)では、夏季・冬季ともに6割以上が「温度差が少なく快適に過ごせている」と回答した。電気代については、夏季で約5割、冬季でも4割以上が「減った」と感じており、ZEHマンションの省エネ性能が生活実感として浸透し始めている。ZEHマンションを知人・友人に「薦めたい」とする回答は約4割で、理由としては「光熱費が安い」が最も多かった。

オーナー側では、「家賃を高く設定できた」との回答が最多となり、資産価値や収益性への寄与が意識されている。補助事業者の8割以上がZEHマンション建設に満足していると回答し、太陽光発電やEV充電設備の導入理由としては「居住者満足度の向上」や「EV普及を見据えた将来対応」が挙げられた。販売促進面でも、約7割のデベロッパーがZEHマンションであることが「効果があった」としている。

■ZEH-Mは「先進事例」から「業界標準」へ
今回の調査から、集合住宅におけるZEH-Mは、補助制度に支えられた先進的取り組みの段階を越え、事業性と居住価値の両面で成立する仕様として定着しつつある状況が浮かび上がった。光熱費削減や快適性といった入居者側の評価に加え、賃料設定や販売促進への効果が事業者側からも確認され、環境配慮が競争力の一要素として受け止められ始めている。
一方で、小規模事業者への依存や、高層住宅における再生可能エネルギー導入の制約など、普及の質を高めるうえでの課題も残る。今後は、補助金に依存しない事業モデルの確立や、地域特性に応じた設備構成の最適化が焦点か。いずれにせよZEH-Mは普及拡大の段階を経て「量」から「質」への転換局面に入りつつあると言えそうだ。