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【独自】橋本総業ホールディングス:「新みらいPJ 改革2025」始動で次の100年へ— 不確実性の時代に挑む成長戦略の全貌に迫る

2025.11.17

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橋本総業ホールディングス 橋本政昭 代表取締役社長

設備機器卸大手の橋本総業ホールディングス(HD)は、次の100年に向けた経営基盤の強化を目的とした「新みらいPJ改革2025」を始動させた。東京都江東区の東雲研修センターで行われた講演で、橋本会長は「HATグループ2,000億円、みらいグループ1兆円をめざす」という企業集団構想を掲げた。講演は産学連携の一環でタイの名門チュラロンコン大学ビジネススクールの学生 約50名を対象に行われた。橋本社長は今年、同大学の非常勤講師に就任している。

「3つのフル」と「四位一体」で業界価値を最大化

講演ではまず、急速に変動する世界情勢を指摘。米中対立の長期化、ウクライナ・中東情勢の不透明化など国際秩序は「協調から対立へ」と移行、企業活動はより大きな不確実性にさらされていると俯瞰。国内でも建設・設備業界は人手不足、資材高騰、資金負担という“三重苦”に加え、4号特例見直しによる工務店業務の煩雑化といった課題を抱える。

一方、インバウンド需要の回復や老朽インフラ更新など、新たな成長機会も生まれている。同社はこうした環境を踏まえ、“外部環境に左右されない企業体質”を築くため、売上構成の最適化、利益体質の強化、業務標準化・デジタル化等を柱とする経営改革を進める。改革の軸となるのは、同社独自の競争力を支えてきた「3つのフル」と「四位一体」の再強化である。

・フルカバー:全国対応の供給ネットワーク
・フルライン:幅広い商材調達力
・フル機能:施工まで一貫して対応する多機能性

130年以上培ってきた総合力は、不確実性の高い時代にこそ真価を発揮させる。メーカー・販売・施工・橋本総業の四者が連携して顧客価値を高める「四位一体」を深化させ“共に栄える”業界共創型のビジネスモデルを追求する。

組織面ではトップダウンからボトムアップへの転換を掲げ、社員一人ひとりの自立性向上を重視。マイスター制度による専門性評価、商流・物流・情報の統合、スマート化による業務効率化など、現場起点の働き方改革を進め“ヒトが育ち、組織が動く”企業体質への転換を図る。

東雲研修センターは物流機能だけでなく施工研修・勉強会や実証研究施設として位置づけられている

「7つのみらい」と“みらい市”が描く成長の地場

同社の長期ビジョンの中心に位置づけられるのが社会課題と市場機会を体系化した「7つのみらい」である。橋本社長自ら構想した。未来の需要を先取りし、同社がどの領域で価値を創出するかを示す成長戦略の核となるもの。これらを軸に金融、海外など全方位的に進化させていく。

① 社会・技術
物価・防衛・社会保障・金融改革など国家政策の転換点を踏まえ、テクノロジー・法制度の変化に対応。AI・データ活用や制度改革に即した事業展開を進め、社会基盤を支える

② 環境・エネルギー
脱炭素化を背景に、クリーンエネルギー、省エネ、蓄電池、ZEH/ZEB/ZWBなどの環境技術に照準。省エネ基準の高度化に対応し、環境配慮型設備の提供力を強化

③ 健康・快適
健康・スポーツ(テニス、ゴルフ等)、医療、生活快適性など、人々のQOL向上を支える領域。住環境の質向上とライフスタイル価値の融合を目指す

④ 安心・安全
BCP(地震・水害)、国土強靭化、公共投資、サイバーセキュリティ、災害対策・インフラ防災のニーズに応える。社会の安全と設備の機能性を結ぶ重要分野として位置づける

⑤ リフォーム・リニューアル
元請け・現調・施工までを一気通貫で支援し、住宅・建築物の改修ニーズに対応。RFクラブみらい、BLRなどのネットワークを活用し、施工力や提案力を高める

⑥ 地域活性化
地域活性化、観光立国、農業をテーマに、インバウンド需要の拡大や地方インフラ整備を設備流通として後押しする。地域経済を支える重要市場として拡大を見込む

⑦ IT(DX・メディア)
DX、AI、SNS、YouTube、映画など多様なデジタルメディアを活用し、商流・物流・情報を統合。発信力とデータ活用力を高め、設備流通の枠を越えた“情報企業”への進化も視野に入れる

これら7つのプロジェクトを象徴する場として、同社主催の業界最大級の展示会「みらい市」がある。オンラインを含め3万人規模が来場し、メーカー・販売店・施工会社が一堂に会し最新技術や市場動向を共有。“共に栄える”という同社理念が年々強く具現化する場となっている。


橋本総業HDは、1890年創業の「橋本商店」を起点に、130年以上にわたり国内設備流通の中心を担ってきた。「新みらいPJ改革2025」が示すのは、変化を恐れず未来を創造する企業へのアップデートと言える。これまでの成功の軌跡を「恐れず挑戦し続けること」と語っていたが、築き上げてきた理念はどこまで組織に浸透・進化させ、業界を新たなステージへ導くのか。今後の展開に注目が集まる。

〔参照〕
橋本総業ホールディングス
数字で見る橋本総業グループ
沿革
東雲研修センター
CHULALONGKORN BUSINESS SCHOOL