【ゼミ】太陽光発電協会:第42回太陽光発電シンポジウム開催―地域と共に歩む太陽光とは?主力電源化への現状と課題を共有

地域との共生。一部の案件によりSNS上でアゲインストの風が吹いているようだが、無限に降り注ぐ太陽の恵みを活かしエネルギーを生み出す、その画期的な発明は人類の平和と持続可能な世界の構築を実現するとの信念が業界には在る。身近になったが故に目立つと言ったところではないか。今はまだその過渡期かもしれない―。
太陽光発電協会(JPEA)は11月5、6日の両日、「第42回太陽光発電シンポジウム」を東京・日本橋の野村コンファレンスプラザで開催した。テーマは「2040年 主力電源への道筋~地域と共に太陽光の未来へ~」。政策当局や学識者、産業界が一堂に会し、太陽光発電の真価と課題を改めて見つめた。
政策の最前線、共生を前提に最大限導入へ
開会にあたり、JPEAの沖津雅浩代表理事(シャープ代表取締役社長執行役員CEO)は「PV OUTLOOK 2050」の実現には、地域との共生や系統制約の克服、FITからの自立、長期安定稼働といった課題の解決が欠かせないと挨拶。続く来賓講演では、経済産業省・環境省・農林水産省がそれぞれの立場から施策を紹介。第7次エネルギー基本計画で掲げる「再エネ主力電源化」の現状と課題を描いた。
経済産業省は、全国1,300件に及ぶ現地調査の結果、約1,000件で行政指導を実施したことに触れ、適正な事業運営と地域理解の両立を呼びかけた。崩落や雑草放置など不適切案件への厳格な対応が進む一方、地域ごとに条例制定が相次ぐ現状を紹介。環境省は、公共施設への率先導入や営農型、民間による自家消費型の拡大支援、ペロブスカイト太陽電池の社会実装など地域脱炭素化を中心に解説。
農林水産省は、営農型太陽光発電の実態を詳細に報告した。2022年度までに5,351件、計1,209haの農地が農地転用され太陽光発電が導入されたとするも、食料安全保障の観点から「営農に支障があるケースも散見される。農業が主体であることを忘れてはならない」と釘を刺した。
国土交通省は緊急対応のため欠席となったが、提出資料では「住宅トップランナー制度」を活用した太陽光設置促進策等を提示。2030年に新築戸建住宅の6割への太陽光発電設備の設置目標に対し現状の設置率は36.5%と推計値を公表している。

学界からの提言、政策と市場の接点を問う
午後の基調講演では、東京大学の高村ゆかり教授が「再生可能エネルギー主力電源化に向けた課題と機会」をテーマに登壇した。気候変動の現状および経済損失、各国のNDC(削減目標)を解説。IEAの見解を引用し「1隻のコンテナ船が運ぶ太陽光パネルで、大型LNGタンカー50隻超が運ぶガス、大型船舶100隻超が運ぶ石炭に相当する電力を供給できる」と太陽光発電の高いポテンシャルを強調した。
京都大学の諸富徹教授は、世界的なインフレ下での再エネ支援策を分析。米英欧が物価スライド制や価格引上げで再エネ投資を後押しする一方、日本は逆に上限価格を引き下げたと指摘し「インフレ対応を怠れば投資は減退する。柔軟な制度設計が必要」と警鐘を鳴らす。
東京理科大学の植田譲教授は「太陽光発電300GW導入への挑戦」と題して講演。高効率モジュールと蓄電池によるリパワリング、既存メガソーラーの「第二世代化」を提唱。営農型についても「作物の品質や地域の付加価値を高める農業支援型PVへの転換」を促し、両面受光型や追尾架台などの技術が農業と共存できることを示した。その後、JPEA増川事務局長を交えたパネルディスカッションが行われ地域共生の在り方について議論を深めた。

初日のシンポジウム閉会後には、地域貢献型の取組を表彰する「ソーラーウィーク大賞2025」授賞式を開催。地域に望まれ、模範となるプロジェクトが顕彰された。地域共生。不適切案件は確かに存在するようだが、称賛と注目されるべき取り組が周知された。
我が国における再エネの太宗を占める太陽光発電。2025年3月末現在で住宅太陽光発電は累計350万件超、産業用は約80万件。容量ベースにして約75GWと電源構成の一翼を担うまで成長した。不適切な案件は確かに存在するが脱炭素社会の実現に向けた期待値も大きい。
最後は関係者がレセプションで交流し、次世代の太陽光発電市場の活性化に向け新たな連携を誓った。
〔参照〕
▷第42回太陽光発電シンポジウム「2040年 主力電源への道筋」~地域と共に太陽光の未来へ~
▷2025年度「ソーラーウィーク大賞」<審査結果発表>