【独自】ジェニュイン日本:帰ってきた自治体共同購入事業の創始者 全国初、千葉県で「LED照明設備一括切替等支援事業」スタート
自治体共同購入事業の創始者が再スタートを切るー。
千葉県は10月7日、事業者向けの「LED照明設備一括切替等支援事業」を開始した。県が事務局を設け、複数の事業者がLED照明への切替を希望する場合に、工事をまとめて発注することでスケールメリットを生み出し、コストを削減する仕組み。環境生活部温暖化対策推進課が所管し、脱炭素化の実装を地域単位で進める。LED照明の一括切替は全国初の取り組み。
同日、県庁本庁舎で協定締結式が開かれ、県を代表して井上容子環境生活部長と、協定先であるジェニュイン日本の藤井俊嗣代表取締役が登壇した。
LED照明は、従来の蛍光灯に比べて消費電力を大幅に削減できる。照明は企業活動の中で基礎的なエネルギー負荷を占めるため、全体のCO₂排出削減に直結する。一方、中小事業者が個別に導入を進めるには、見積取得や施工業者の選定に手間がかかり、資金負担の面でも足かせになっていた。
県内の事業者数は約4万社。そのうち半数近くは今も蛍光灯を使用しLED化が進んでいない。国全体でもLED照明の普及率は約50%にとどまるとされ、国は2030年に100%普及を目指す方針を打ち出しているという。
■蛍光灯の“時代の終わり”
このタイミングでLED照明の普及を加速させる背景には、蛍光灯の製造・輸出入禁止という政策転換がある。地球温暖化対策と有害物質規制の国際的な流れを踏まえ、日本では2027年末以降、一般照明用の蛍光ランプの国内製造・輸出入が禁止される。
蛍光灯には水銀が含まれることから環境負荷の観点からも段階的な廃止が進められてきた。「水銀に関する水俣条約」に基づく国際的な規制の一環。
照明市場ではすでにLED化が主流になりつつあるが、事業所や店舗、公共施設の中には、依然として蛍光灯を使い続けているケースも多い。
今後、交換用のランプが手に入らなくなることで、設備更新は不可避になる。政策環境の変化は、単なる“照明の置き換え”ではなく、脱炭素社会へのシフトを加速させる大きな節目ともなる。
■「共同購入」「一括切替」スキームとは?
本事業の中核を担うのが、ジェニュイン日本。代表の藤井俊嗣氏は、かつて「自治体共同購入事業」という仕組みを日本に根づかせた人物。再び自治体とともに地域脱炭素を進めるために現場に戻ってきた。
2017年に設立した前職のアイチューザーで、全国の自治体と連携し、太陽光発電・蓄電池の一括導入事業「みんなのおうちに太陽光」を展開。全国へ波及させた。
「共同購入事業」とは、複数の個人や事業者が自治体を通じて同一設備をまとめて購入・設置するスキーム。参加者の申し込みを自治体がとりまとめ、調達・施工を一括して行うことで、スケールメリットによる価格低減と品質確保を両立する。購入者にとっては「安心」「手間なし」「お得」を同時に実現するモデルとして注目されてきた。
ヨーロッパでは、行政主導の共同購入がすでに定着して、再エネ導入拡大の一翼を担っている。日本では藤井氏がこの仕組みをローカライズし、地方自治体と連携して脱炭素機器を普及させたことで知られる。今回の千葉県LED事業は、その理念を継承しながらも、制度設計を洗練させたいわば“第二章”にあたる。
千葉県は、ジェニュイン日本との協定を通じて、複数事業者を束ねた「一括切替」の枠組みを整備。登録後の流れは明快で、①参加登録、②現地調査(1~2週後)、③見積書発行(2週間以内)、④契約締結、⑤工事実施(契約後おおむね1か月以内)というプロセスが一気通貫で管理される。導入負担を軽減しながら、県全体での脱炭素化を加速させる。
「エネルギーを想うことが、暮らしの一部になる未来へ」。ジェニュイン日本は脱炭素社会の実現を市民・企業・自治体が三位一体で取り組む社会像を描く。「ゴミの分別」「レジ袋の有料化」が日常化したように、省エネや再エネの導入も“特別な行動”から“当たり前の習慣”へ。その変化を促す仕組みこそ、同社の提供価値の核心にあるとする。藤井社長は「LED照明だけでなく自治体とともに多様なスキームを展開したい」と今後の方向性を話していた。
〔参照〕
▷「千葉県LED照明設備一括切替等支援事業」の開始について
▷ちば・ひかりスイッチ
▷一般照明用の蛍光ランプの規制
▷ジェニュイン日本
▷みんなのおうちに太陽光