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【実像】太陽光発電市場2025:FIT・FIP制度下では鈍化傾向も自家消費拡大で年間5GW規模!?統計整備が急務

2025.09.02

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太陽光発電市場は拡大しているのか否か。市場の実像に迫ってみる。

経済産業省・資源エネルギー庁は8月20日、『再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法における再生可能エネルギー発電設備』における導入状況等を公表した。太陽光発電の累積導入数は429万5千件・76.0GWに到達。このうち住宅は358万3千件・16.5GW、産業用は71万2千件・59.5GWを占める(2025年3月末時点)。

単年度では前年に比べ23万件・2.8GWの増加。住宅用が22.5万件・1.1GWの増加で市場をけん引する一方、産業用は0.4万件・1.7GWで、ここ数年は鈍化傾向にみえる。

太陽光発電の累積導入容量・件数と単年度の推移(右)

住宅分野は安定的な拡大を続ける。年間導入件数は20万件を超える水準を維持し、容量でも毎年1GW前後の積み上げが見られる。ZEH標準化、省エネ志向、光熱費対策、手厚い国・自治体補助などが普及を下支えし、導入の勢いは衰えていない。

一方、産業用は伸び悩みが顕著。固定価格買取制度(FIT)の縮小や設置余地の制約とされているが、統計上、2025年度は0.4万件・容量ベースでも1.7GW増加に留まった。

単年度における住宅太陽光発電(10kW未満)の導入容量・件数と産業用(10kW以上)の推移(右)

だが、出荷統計に目を向けると違った姿が浮かび上がる。太陽光発電協会と光産業技術振興協会が集計した2024年度の太陽光パネル出荷量は約5.5GW(住宅用:約1.4GW・産業用:約4GW)だった。

経済産業省の諮問機関である総合エネルギー調査会の議論でも「直近の追加導入は年間5GW程度」と推計している。省エネ法の定期報告制度により2023年度には約14億kWh(約2GW、約2,500件)の自家消費案件が確認されている。

同様の調査は環境省も実施。電力調査統計に基づき、電気事業者の導入実績からFIT認定リストを除外する手法で算定したところ、2020〜2023年度における自家消費型の導入量は約1.7GW。WEB調査やヒアリング、再エネ100宣言RE Action等からの情報を加えた試算では2020〜2024年度の累積は約3.2GWに達するという。

(出典:経済産業省資料より)

住宅用にもV2Hや蓄電システム等を伴った自家消費という概念は存在するが、多くは系統連系を伴う余剰売電が組み込まれる。卒FITも然り。出荷統計とも整合性がある。つまるところ、乖離があるのは産業用。

見かけ上「産業用は鈍化」と映るが、実際には自家消費型を中心とする市場拡大が進み、実態としては年間4-5GW規模の市場で推移しているとみられる。

再生可能エネルギーの主力として太陽光発電が果たす役割は大きい。だが、FIT・FIP制度化の統計だけでは市場の実態を捉えきれていない。自家消費やNon-FIT型を正確に把握する統計制度の整備が急務と言えそうだ。

〔参考〕
再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 情報公表用ウェブサイト
太陽電池出荷統計の各四半期の詳細
日本における太陽電池出荷統計 2024 年度第4四半期
総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第74回)
資料1 今後の再生可能エネルギー政策について