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【市況】高効率給湯器市場:エコキュート累計出荷台数1,000万台突破、太陽光発電の余剰電力活用など省エネからエネマネ機器の中核へ

2025.08.19

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(出典:HPより)


高効率給湯器市場の一角を占める「エコキュート」が、新たな節目を迎えた。累計出荷台数は1,000万台を突破。政府の補助金や再エネ活用の後押しもあり、省エネ機器の代表格として広く定着してきた。ただ足元の出荷は前年並みのペースにとどまる。次の成長のカギはどこにあるのか。

エコキュートは、ヒートポンプ技術を活用した電気給湯機で、CO₂を冷媒として使い、空気中の熱を効率的にお湯へと変換する仕組み。従来の電気温水器やガス給湯器と比べ、消費電力量を大幅に抑えられることから、省エネと環境負荷低減の両立を実現する存在として定着してきた。

直近の出荷台数推移を見ると、2022年度に約70万台と過去最高を記録した後、2023年度は63万台、2024年度は66万台と落ち着いた水準で推移。今年度(2025年度)は上半期で32万台と、現状は前年と同程度のペースにとどまっている。『給湯省エネ2025』や自治体による補助制度が用意されているものの「爆発的な伸び」というよりは堅調な普及が続く。ライフスタイルやエネルギー利用の変化とともにじわりと裾野を広げていくのかもしれない。

実際、エコキュートは単なる給湯機を超えて、エネルギーマネジメントの中核を担うポジションに近づきつつある。家庭用蓄電池や電気自動車との連携も視野に入るなかで、「いつお湯を沸かすか」「どの電力を使うか」といった制御技術が高度化している。給湯機が家全体のエネルギー効率を左右する存在になる、そんな未来像も描かれている。近年、太陽光発電の余剰電力を有効活用する「おひさまエコキュート」が登場。昼間に太陽光で沸き上げ、夜間に使うという新しいスタイルが将来的に地域マイクログリッドや面的なエネマネにつながるとして関心を集め、再エネ活用を後押しする象徴的な製品にもなっている。

こうした状況を踏まえると、エコキュート市場は「急成長から安定拡大へ」と移行しつつあるように映る。補助金の有無だけではなく、再エネとの組み合わせや新しい生活スタイルにどれだけ寄り添えるかが、次の普及のカギを握る。

今年の出荷台数はやや落ち着いたペースで進んでいるが、それを「足踏み」と見るか「定着」と見るかは、視点次第でもある。エコキュートが次にどのような広がりを見せるのか。注目が集まる。

〔参照〕
家庭用ヒートポンプ給湯機
日本冷凍空調工業会 自主統計
地球と家計にやさしいエコキュート。ついに1,000万台 突破!!