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【独自】え、まだ使ってないの?スマートホーム市場の四天王が語る「ちょっと先の住宅の未来。」

2024.11.04

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CEATEC 2024では10月16日に「スマートホームの現状と未来」と題した特別セッションを開催。市場を牽引する4名が国内外の普及状況や新しい通信規格「Matter」など最新情報を交え、ちょっと先の住宅の未来像を描いた。

「スマート◯◯」と言えば何か新しい。そんな語感を持っているが、住宅に関しては2つの単語「スマートハウス」と「スマートホーム」が存在する。いずれも、「次世代の住まい」をめざす点において共通しているが、扱われ方や市場は少し異なってきた。

前者は太陽光発電・蓄電システムなどを搭載した住宅が登場した2000年代から使われるようになったと考えられている。環境に優しい「エコハウス」という言葉も存在したが、いずれも「ハウス」である。脱炭素領域において普及が叫ばれるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は1998年に世界で初めてミサワホームが販売を開始したことで知られる。

一方、「スマートホームホーム」に関しては1980年代に海外で「ホームオートメーション」という概念が生まれ、国内では「TRON電脳住宅」「ユビキタス」「IoT」といった情報通信の側面から浸透していったとみられる。

業界統一規格「matter」の普及をめざすConnectivity Standards Alliance 日本支部 Chairに就任したX-HEMISTRYの新貝文将社長は「家の中の設備機器がネットに繋がり、これまでわからなかったことがわかるようになるソフトウェア技術。スマホや音声などでコントロールでき、生活者の課題解決を実現する新たなインフラ」と定義していた。

数年前まで「スマートホーム」は「単なるガジェット感」が強かったが、インターネット環境の爆発的普及、脱炭素化の推進といった社会的背景により今、両市場は融合の最中にある。

構造物としての住宅だけでなく居住空間と世界がリンクしていく。実現可能なのか。

スマートホーム先進国アメリカでは「スマートデバイスの保有率は45%を超え、1世帯当たり平均8個保有している」との統計データを示した上で、イノベーター理論的には「レイトマジョリティ(周囲の大多数が採用している場面を見てから採用する層)に突入している」と指摘。「業種問わず400社以上の企業が参入している」とグローバルでの活況具合が解説された。

(HP資料より)

スマートホームが当たり前の世界。三菱地所 住宅業務企画部 統括の橘嘉宏HOMETACT PJリーダーは欧州の家電量販店やホームセンターを視察した状況を紹介。「どの店舗に入ってもAI家電コーナーが用意され、個別のブランドが個別の製品を販売しているわけではなく、他メーカーのどの家電でも繋がっていく、スマートホームというブランドを前面に押し出している」「スマートデバイスがどこでも手に入る」と国内との違いを話した。

遅れてなるものかと言わんばかりに同社では総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」を開発。異なる設備機器やブランド・メーカー問わず連携させるプラットフォームを展開しているが、大手デベロッパーを中心に差別化要素の切り札として採用がここ数年で急増しているという。

双璧をなすスマートホームサービス「SpaceCore(スペース・コア)」を提供するアクセルラボの青木継孝CTOも「賃貸・アパート・分譲マンションだけでなく戸建住宅といった400社以上の企業が自然と採用し始めている。空き家率の改善や賃料アップにもスマートホームの導入が優位に働く」と市況の変化を分析した。

これまでの課題「スマートホーム1.0」は「つなげたくても、つながらない。初期設定や使い方がわかりにくい。詳しいヒトしか使いこなせない。セキュリティやプライバシーが不安」だったが「つなぎたいものが、当たり前のようにつながる。初期設定でつまずかない。誰にでも使える。セキュリティやプライバシーも安心」と「スマートホーム2.0」へと進化していく。

実現を可能にするひとつの要素が「matter」だという。これはgoogle、アップル、amazonなど巨大企業も参画し開発が続けられている業界統一規格。QRコードを読み込むだけでデバイスのセットアップが完了する仕組み。「Wi-FiやBluetoothマークと同じように一般化していく」と期待されている。

単にスマートだけでなく自然との調和を目指したデバイスを開発するmui Labの佐藤宗彦CXOは「matterをはじめ繋がっていくという機能的価値は担保されていく。安心安全にもなっていく。であれば、その先のサービス、情緒的価値、付加価値が重要になってくるだろう」との見通しを語っていた。

国内においては何度となく流行と衰退を繰り返してきたスマートホーム市場。今回はホンモノか。注目が集まる。

【参考】
ZEHのパイオニア
X-HEMISTRY
Connectivity Standards Alliance
スマートホーム産業カオスマップ最新版
HOMETACT
SpaceCore
mui Lab
Matter