【独自】パワーエックス、蓄電池は使ってなんぼ。新発想の再エネ電力サービス「X-PPA」って何?
気鋭の蓄電ベンチャー、パワーエックス。突如として現れた新生は何をめざすのか。10月2日~4日に幕張メッセで開催された脱炭素経営 EXPO【秋】では、同社が注力する新発想の再エネ電力サービス「X-PPA」の一端を明らかにした。
同社は21年3月設立の大型ルーキー。創業者であり代表を務める伊藤正裕氏はアパレル通販大手ZOZOで「ZOZOSUIT」「ZOZOMAT」などを手掛けた鬼才。この他、ボードメンバーにはテスラ、Google、ゴールドマン・サックス、SMBCなど多彩な経歴をもったスペシャリストで構成される。
再エネの課題である「生み出される場所で溜められない。溜められないから運べない。運べないと普及しない」を解決することを目標とし「永遠に、エネルギーに困らない地球」をコンセプトに掲げる。
壮大な事業理念だが設立当初より、中期ビジョンとして2024年までに1GWhの大型電池工場を日本国内に建設。2028年までに年間5GWhへの生産能力拡張を計画していた。工場ではセルの製造は行わず、電池のパッケージングを自動化。大量生産によるコストダウンで、船舶用電池やEV急速充電器、系統用蓄電システムなどを開発していくロードマップを敷いていた。
立ち上がりから僅か数年。すでに岡山県玉野市で国内最大級の蓄電池組み立て工場「Power Base (パワーベース)」を完成させ実機の出荷を開始。現状、モジュールレベル生産能力3.9GWh、定置用電池出荷能力は1.3GWhを超えるという。
実行力。その実現可能性は金融機関を中心に累計259億円を超える資金調達を受けるなど業界問わず注目度が高い。メルセデス・ベンツ、Audi、BMWといった高級車ブランドとの提携。蓄電所の開発など話題に事欠かない。
手練れ。単なるメーカーではないようだ。電力事業部の飛澤航平部長は「日本国内のCO2排出量の約4割が電力部門に起因している。パワーエックスは蓄電池を用いることで、同部門の削減と再エネ普及、効率的な電力供給の両立を目指している」と話した上で、法人向け電力サービスの真髄を解説した。
現状、需要家における再エネ導入は自家消費・オンサイトPPA、自己託送、オフサイトコーポレートPPA・分割供給、電力+非化石証書の4つに分類される。一方、蓄電能力の確保、導入量と時期や再エネの種類、長期の契約内容、価格見通しが不安定であるといった経済性の問題があるという。
どれを選べば最適か。昨年末に生み出されたのが「X-PPA」である。今夏より本格スタートした。
同社の電力サービスは、顧客のニーズに合わせ蓄電池の設置有無(オン/オフサイト)や再エネ電源比率・種類を選択でき契約期間10年からと、フレキシブルな契約体系を特徴とする。全方位的に。三菱HCキャピタルグループや丸紅新電力などが採用しているが既に「提案状況は現在200MW近くにのぼる」と明かす。
最後に「蓄電池は使われることが使命。今後も蓄電池を軸とした電力事業を展開し、再エネ電力の調達に関わる課題を、国内で製造する蓄電池で解決していく」との意気込みが語られた。その勢いは如何に。大型ルーキーの動静に注目が集まる。
【参考】
▷X-PPAで夜間太陽光