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【市況】家庭用燃料電池エネファーム:累計50万台突破も踊り場到来!?前年比24%減2.9万台で推移

2025.08.19

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(出典:HPより)


家庭用燃料電池システム「エネファーム」が発売から15年を迎え、市場は新たな局面に差し掛かっている。2023年11月時点で累計50万台を超え、普及初期は国の手厚い補助金を背景に販売が伸びたが、直近の実績を見るとやや踊り場に差し掛かっている。

2009年に世界に先駆けて登場した同製品は、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、その排熱で給湯も行う。高効率と省CO₂効果に加え、停電時の非常用電源としても注目されてきた。メーカー各社はコンパクト化や効率向上を進め、SOFC(固体酸化物形)は電気需要が多い世帯向け、PEFC(固体高分子形)は給湯需要が多い世帯向けと、利用スタイルに応じたモデルを展開。住宅事業者の中には太陽光発電、蓄電池、燃料電池という3電池を組み合わせた次世代住宅を推進する潮流もあった。

家庭で消費する電力の約6割を自家発電で賄える。電気と熱を併用することでエネルギー利用率は約9割。ハイブリッド車2台分に相当する年間1.4~1.5トンのCO₂排出削減効果を持つ。停電時には最大700Wの電力と給湯を確保できるため、災害時の安心材料となる。近年は地震や台風などによる停電リスクが顕在化し、家庭のレジリエンス機能としての意義は確かにある。

ただ、コージェネ財団の自主統計によると2022年度47,191台、2023年度39,269台、2024年度29,933台と、ここ数年は右肩下がりで推移している。普及の最大のハードルは導入費用。燃料電池ユニットと貯湯ユニットを設置するためのスペース確保も必要となる。国や自治体の補助金施策が普及を後押しする一方、政策依存度の高さが持続性の課題ともなる。家庭向け高効率給湯分野では、ヒートポンプ式の「エコキュート」や「ハイブリッド給湯機器」とも競合する。

脱炭素政策の強化や災害対策需要の高まりを追い風に、エネファームは一定の存在感を保ち続けるとみられる。とはいえ販売台数の鈍化は明らか。消費者に選ばれる理由をどこまで磨けるかが問われているのかもしれない。

〔参照〕
エネファーム(家庭用燃料電池)
エネファームメーカー出荷台数