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【ゼミ】BECC JAPAN 2025:未来世代から感謝される社会へ。フューチャーデザインと省エネ・脱炭素を議論

2025.09.01

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住環境計画研究所 代表取締役 中上 英俊 会長


気候変動・省エネルギー行動会議「BECC JAPAN 2025」が8月27日、東京大学生産技術研究所で開催された。第12回目となる今回は産学官から113名が参加し、未来世代に責任を果たす社会設計と省エネ・脱炭素社会の実現をめぐり、多彩な議論が行われた。

同会議は2007年に米国で始まった「Behavior, Energy and Climate Change(BECC) Conference」の日本版。住環境計画研究所 中上英俊 会長の発案で2014年にスタートした。以来、研究者と実務者が一堂に会し、行動変容を通じて持続可能な社会を議論する場として発展してきた。

冒頭、中上会長が「米国で始まったBECCを日本に導入してから10年以上。企画した年が気候変動対策における温室効果ガス削減目標の基準年である2013年であることは感慨深い」とBECC JAPANの活動を振り返る。続いて経済産業省、環境省、国土交通省の来賓が登壇し、エネルギー基本計画やGX推進法、地球温暖化対策計画に基づく施策等に触れつつ、BECC JAPANでの議論が有意義な知見を提供してきたとの活動意義を評価した。

基調講演では京都先端科学大学 国際学術研究院 西條辰義 特任教授氏が「フューチャー・デザイン:将来世代から感謝される社会のデザイン」と題して講演。将来世代を仮想的に設定し、その視点で現在を見直す「仮想将来人」の仕組みを紹介した。「未来の幸福をめざす選択こそが、いまを豊かに感じる力になる」と語り、長期的視座の重要性を訴えた。

賑わったのがネットワーキングランチにて行われたワークショップ。2050年に脱炭素社会が実現した未来を想定し、その立場から現在を問い直す試みで、参加者からは「太陽光発電は当たり前のインフラ」「自宅に菜園を持ち自然と共生している」といった生活像が示され「休日の余暇をどう豊かに過ごすか」といった暮らしの価値観まで議論が広がった。技術革新だけでなく、人間の価値観やライフスタイルの変化を含めた未来像が描かれ、脱炭素を社会全体の幸福と結びつける視点が光った。

BECC JAPANは日本における行動科学と環境政策を結びつける独自の役割を果たしてきた。今回の会議は、フューチャーデザインの理念を取り込みつつ、2050年脱炭素社会の具体像を探る場となった。午後の発表では行動科学を実務に生かす可能性が議論され、学術と実務が交差する場の意義が再確認され「持続可能な社会は技術だけでなく、一人ひとりの行動と価値観の変化によって実現する」という認識へと収斂したようだった。未来世代に「ありがとう」と言われる社会をどう築くか――参加者は改めてその問いに向き合った。

BECC JAPAN 2025「第12回 気候変動・省エネルギー行動会議」開催概要
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