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【独自】日新電機:受変電・調相設備から次世代電力インテグレータへ 100年磨いた系統連系技術で再エネ普及と地産地消を推進

2025.07.24

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受変電・調相設備から次世代電力システムのインテグレータへ。
創業100年を超える老舗には次代を見据え、コア技術とその周縁を組込み、業態を進化させる逆説的な伝統があるのかもしれない。京都の名門企業の一社として知られる日新電機は何処へ向かうのか。再エネ事業を展開する同社電力・環境システム事業本部に訊いてみた。

同社は1910年に「日新工業社」として冨澤信氏が創業。日本の電化黎明期から、電力インフラを支える技術開発を担ってきた。電気計器製造をはじめ現在に続く配電盤事業、コンデンサ、計器用変圧器、ガス絶縁開閉装置等を展開。応用技術として生み出された半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用イオン注入装置は世界シェアNo.1を誇る。1987年よりタイ・中国・ベトナムなどに進出し、生産・販売拠点を構えるなど国内だけでなく世界のインフラ構築に貢献する。年商1500億円超の老舗。現在、設立初期の1937年より協業関係にあった住友電気工業の完全子会社となっている。

再エネ事業に関しては太陽光発電普及の黎明期とも言える1984年に系統連系用太陽光発電システムを開発。90年代には山梨県企業局、沖縄県糸満市市庁舎、南極昭和基地など公共産業用を中心に設計・施工を手掛けた。固定価格買取制度(FIT)スタート前後から屋外型100kW/250kWの中型パワーコンディショナ『Solar Pack』シリーズも展開し、得意の系統連系技術で特別高圧領域・大型メガソーラー市場の一角を占めた。この拡大期より太陽光発電単体だけでなく蓄電システムやEMSなどを組み合わせたスマート電力システム(SPSS :Smart Power Supply Systems)の取組みを進め、時代の先をゆく次世代電力システムをめざしてきた。

2023年に住友電気工業の完全子会社となったことから、同社とその子会社である日新システムズはグループの一員として新たな体制のもと、CNや電力市場の変化に対応したエネルギーソリューションの開発・提供を加速させている。グループ各社の強みを活かしながら、アグリゲーション事業をはじめ、需要家向け再エネ設備導入、蓄電所の構築・運用支援に至るまで、ERAB事業を包括的に支援する活動を展開。再生可能エネルギーの普及や電力の需給調整といった社会的課題に対し、グループ全体で持続可能な価値提供を推進している。

電力・環境システム事業本部の井尻有策 グループ長は「長年培ってきた受変電設備機器だけでなく系統連系技術が評価され、蓄電池などを含めた分散型電源システムの引き合いが増えている」と近況を述べる。直近ではアグリゲーターと連携し需給調整力市場に対応した蓄電池システムを打ち出し脱炭素社会に貢献しつつ経済合理性を高める提案を強化している。

同部 武下和広 部長は「中核製品である受変電・調相設備をベースに今後も次世代電力インフラに関する多様なニーズに応えていくことで、再エネや蓄電システムの導入拡大、アグリゲーターとの協業・地産地消といったエネルギーの最適運用とCNに貢献していきたい」と話していた。

電力インフラの成長と歩みを共にしてきた110年。進化する老舗の伝統は今後も続く。

日新電機 電力・環境システム事業本部 産業営業部 ソリューション推進プロジェクト 武下和広 部長と同部 システムエンジニアリング事業部 ソリューション技術部 京都産業技術グループ 井尻有策 グループ長(右)

〔参照〕
日新電機
日新電機のエネルギーソリューション