【独自】データセンター最前線:AI・IoT・DX拡大で賑わう注目株、急増する電力使用量と脱炭素化の行方
仮想と現実―。
インターネットの普及により手元の端末から何処へでも繋がれる世界。便利。その良し悪しは別として、デジタル空間を支えるのがデータセンターである。脱炭素・カーボンニュートラルの文脈においても生成AIやクラウドサービスの急拡大に伴う電力使用量の増大から注目が集まる。では、そもそもどのような市場なのか。ネット社会の多様化がはじまった2008年から我が国のデータセンター事業を見守る特定非営利活動法人日本データセンター協会(略称:JDCC)にその実態について訊いてみた。
データセンター(DC)は、企業、政府、団体などが利用するITシステムや大量のデジタルデータを24時間365日体制で収容・管理する専用施設。サーバー、ストレージ、ネットワーク機器等を集約。高効率空調・照明、電源設備、セキュリティ、災害対策といった各種インフラが高い水準で整備されている。
参画企業は世界のネット市場を席巻してきたMicrosoft、Google、Amazon、Apple、Meta などのクラウド事業者。日本国内ではNTT、KDDI、ソフトバンク、楽天といった通信系。コロケーション型と呼ばれサーバーを置くスペースを貸し出すサービス業態としてはEquinix、CyrusOne、さくらインターネット。ITサービスでは富士通、NEC、IIJなどなど。様々な業種が金融取引、行政サービス、ECサイト、SNSなど、現代社会のあらゆるデジタルサービスの稼働を支える。
これら急成長するデータセンター業界のハブとして機能するのが、特定非営利活動法人日本データセンター協会(JDCC)である。国内の主要事業者や関連企業 約380社が加盟。「約2割がデータセンター事業を展開。残り8割が設備関連・不動産・建設業など。近年ではエネルギー事業者も増加傾向にある」という。協会では技術研修、ガイドブックの発行、国際標準との整合など、業界の人材育成や標準化活動に取り組む。

第47回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 JDCC資料より
国内のデータセンター市場についてJDCC事務局は「日本標準産業分類にはデータセンターの業種定義がない。また、『データセンター』の定義もないため、例えばオフィスの一角にサーバールームを設けて『ここはデータセンターです』と位置づければ、データセンターと言えてしまう」
「国内には350箇所以上のデータセンターが存在することは確認できているがセキュリティ上の問題から情報開示されないケースが多く、全体の市場規模は不確かなことが多い。増加傾向にあると考えられるが大小含めれば数千箇所にのぼるのではないか」と分析する。
続けて「数年前まで10台必要だったものが1台ヘといった具合に効率化と省スペース化が進んできた。とはいえ、データセンターの建設には大規模なものになると数千億円程度の投資が必要となる」ことから簡単に参入できる市場ではなさそうだ。

第7回デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合 資料より
経済産業省と総務省が今後のデジタルインフラの方向性について議論した「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」によると、我が国におけるデータセンター市場の動向は増加傾向にあり2023年時点で500箇所を超えるといった調査データがある。いずれにせよ市場は拡大基調にあると言えるだろう。
では、脱炭素・カーボンニュートラル化についてはどうか。国内ではさくらインターネットが北海道石狩市において外気冷却と再生可能エネルギーを活用する「グリーンデータセンター」を運営。世界の巨人GAFA等においても再エネによる運営が当然のように加速している。各種事業者においても然り。

第47回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 JDCC資料より
「データセンターは24時間365日稼働し続けるため、非常に多くの電力を消費する。小規模なものでも数百kW、大規模なものになれば数MWといった単位になる。つまり、建物に太陽光発電を搭載するだけでは電力を賄いきれない。脱炭素化を進めるのであればクリーンな電力か非化石証書等を購入するしか方法がない」という。先の経済産業省・総務省WGでは、データセンターの電力需要を2033年度で現状から+537万kWの増加を見込んでいる。
今後の方向性は。「データセンターの運用は事業者だけで完結するものではない。施設で消費される膨大な電力は、そこに収容されたクラウドサービス事業者やIT企業が提供するサービス運用に直接関わっている。つまり、データセンターの脱炭素化を推進するには、運営事業者とサービス提供事業者の協力が不可欠。両者が連携し、再生可能エネルギーの利用拡大や効率的な電力管理を進めることで、持続可能なデジタル基盤の構築が実現する」と話した。
データセンターの脱炭素化。デジタル社会の進化と共に期待値が高いと言えど、その道のりは簡単ではなさそうだ。

第7回デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合 資料より
〔参照〕
▷特定非営利活動法人日本データセンター協会
▷第7回デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合
▷第47回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会
▷さくらインターネット、石狩データセンターのCO2排出量ゼロを実現
▷Google:all driving toward our global goal of net-zero emissions by 2030.
▷Amazon:サステナビリティの取り組み
▷Apple:アップル2030
▷Meta:Prioritizing sustainability